エンタメ

来年こそすっきり年越しを 紅白歌合戦の舞台裏から

 コーラスに合わせて踊るピコ太郎=NHKホール

 ステージを映す唯一のモニターが、「トレンディエンジェル」の2人の頭に隠れてよく見えないのだが、これは“ぜいたくな”不満なのだろうか―。そんな疑問が浮かんだ記者の目の前をきらびやかな衣装をまとったアイドルやスターが緊張した面持ちで行き来する。NHK紅白歌合戦が行われた東京・渋谷のNHKホール。出場者やスタッフの熱気がこもる大みそかの舞台裏を取材した。

 紅白取材は初めて。そもそもこれまで最初から最後まで見たことがなく、紅白に対する思いは、年越しそばと同じく「なければ少し寂しいかも」くらいのものだった。年末にリハーサルも含めた紅白取材に行くのは「仕事だから」以外に理由はない。しかも、話題の中心だったSMAP出場もなくなり、すでに「終わった感」すら漂っていた紅白なら、なおさらだ。

 しかし、リハーサルを取材するにつれ、徐々に“紅白観”が変わってきた。多くの取材陣が詰め掛け、歌手を取り囲む様子に改めて「国民的歌番組」に対する世間の関心の高さを感じたし、実際にリハーサルに臨む歌手を目の当たりにして、「これだけのメンツを一堂に集める紅白ってけっこうすごいのかもしれない」という気持ちになってきた。

 取材を通して最も印象に残ったのは、本番直前の歌手たちの姿だ。いまをときめくアイドルや百戦錬磨のベテラン歌手が、ギリギリまで振り付けの確認している様子には胸を打たれた。紅白だからなのか、普段からそうなのか、ステージの裏側に入ったこと自体初めてなので分からないが、完璧なパフォーマンスを見せようとする彼らのプロフェッショナリズムに触れ、思わず、自分自身の仕事に対

する向き合い方を猛省した。

 モニターを通して見た本番の舞台でも、それぞれの歌は素晴らしかったし、それはテレビを通じて視聴者に伝わったと思う。それだけに、“紅組逆転勝利”のプロセスをはじめ、分かりにくい演出が目立ち、彼らのパフォーマンスに水を差したのは残念だった。

 なかでも、郷ひろみと土屋太鳳のパフォーマンスの直前に突然現れた平野ノラの演出にはまったく必要性を感じなかったし、画面に映し出された郷の戸惑ったような表情が忘れられない。リハーサルでも本番前の楽屋でも、真剣な2人の姿を見ていただけに、余計にそう感じた。

 NHKは2019年の第70回紅白までの共通テーマに「夢を歌おう」を掲げる。真っすぐ見据えるのは2020年の東京五輪・パラリンピックだ。今回はその第一歩という意味合いが強く、チャレンジした側面もあったと思う。しかし、あまり「2020年」にこだわり過ぎると、これまでの視聴者が離れかねない。年越しそばが、年越しパスタになってしまったら「いらない」という人は増えると思う。(辻将邦・共同通信記者)


(共同通信)