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『読んじゃいなよ!』高橋源一郎編 学生たちが岩波新書で遊ぶ

 

 とてもお得な本だ。いろいろな果実を得ることができるという意味で。

 第一に読書本として。明治学院大学国際学部のゼミで作家の高橋源一郎と学生たちが3冊の岩波新書を選び、それぞれ数カ月かけて徹底的に読み込んだ。2泊3日の合宿を経て、最後は各著者を教室に招いて質問攻めに。本書はその対論の記録であり、見方によれば岩波新書の宣伝本なのだが、読書を通じて自らの価値観や人生観が更新されるという体験を率直に伝えている。

 第二に教養書として。選ばれた3冊は鷲田清一の『哲学の使い方』、長谷部恭男の『憲法とは何か』、伊藤比呂美の『女の一生』。万全の態勢で対論に臨んだ学生たちの問いも真剣なら、答える著者も真剣だ。ぐいぐいと本質に迫る議論が展開する。進行役の高橋先生も思わず参加。面白くてタメになる。

 第三に教育本として。本書の企画はゼミで討論を重ねた結果、生まれた。学生たちの読書感想文や座談会、おまけ企画といった雑多な要素が盛り込まれ、その意味では、本書自体が一つの教育プロジェクトの報告書ともいえる。授業にはゼミ生以外の卒業生や社会人も出入りして楽しそうだ。学生時代、こんな授業があれば受けたかった。

 第四に若者論として。学生たちの発言や手記からは、この時代を生きる若者の不安と希望がほの見える。彼らを「今どきの若者」と一括りにはできないにしても。

 学生たちが伝統と権威の岩波新書で遊んだ岩波新書。タイトル同様、中身も破格。

 (岩波新書 980円+税)=片岡義博



(共同通信)