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思い出深き台湾~前編~

 将棋駒の製作実演コーナー

 2017年の初海外は台湾でした。食べ物がおいしく、気候や人柄が穏やかでお気に入りの場所です。

 コラムを書くに当たり振り返ってみたところ、06年から計14回も渡航していました。今回はその思い出の数々と変遷をつづっていきたいと思います。

 台北には日本将棋連盟の支部があり、年に数回ほどプロ棋士による指導対局が行われています。

 最初に伺った頃は日本人の会員が多かったのですが、メンバーが徐々に入れ替わり、近年は現地の方が多く参加するようになってきました。月に一度、とても和やかな雰囲気で定例会が開かれています。

 他の国や地域の将棋クラブとの一番の違いは、将棋の駒へのこだわりでしょう。彫駒から盛上駒まで、立派な駒がそろっています。

 これらは年月を重ねて集まったもので、かつて駒が入手困難な頃には、段ボールに字を書いて作ったものもあったそうです。

 これを見たときに私は何とも言いようのない気持ちになって、「国際将棋普及サポーター」という名称で、日本国内に木駒の提供を呼び掛けて支援することにしました。使わなくなった駒を寄贈してくださる方や、山形県天童市の駒屋さんにもご協力をいただき、集まった品物をまとめて台北支部に贈りました。

 会員の陳嘉緯さんはインターネットで見た将棋駒にひかれ、10年頃から独学で駒を彫り始めました。駒の木地や彫るための道具は自作です。あまりの熱心さに周りがつられ、駒に興味を持つ方が増えたそうです。

 12年には現地の紀伊國屋書店で、「将棋フェスタ台北」というイベントを開催しました。森内俊之九段(当時名人)に出演いただき、10面指し、目隠し対局や、どうぶつしょうぎ大会などを行いました。

 その企画の一つとして駒師の富月さんをお招きし、将棋駒の製作実演を行いながら陳さんと林震煌さんを指導していただきました。

 当時、支部長の黒崎淳一さんは「駒作りをしている台湾人会員が、台湾人書家による駒字から盛上駒を作り、台北で行なわれるタイトル戦に提供すること。そしてその駒を持参して、台湾各地へ将棋行脚に出掛けること」と、今後の夢を語っていらっしゃいました。

 そして今年1月に支部を訪れたとき、林さんが字母紙から作成した駒が、とうとう完成していました。これぞ正真正銘、台湾産の将棋駒です。

 この日はその駒を使って、台湾人のプレーヤーが、10月に九州で行われる「国際将棋フォーラム」への出場をかけた選抜リーグ戦を行っていました。

 将棋という日本文化がゆっくりと時間をかけてその地に浸透していく様子を目にし、感慨深いものがありました。(北尾まどか)


(共同通信)