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『わたしは、ダニエル・ブレイク』 弱者に寄り添う社会派の巨匠、2度目のカンヌ最高賞受賞作

(C)Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2016

 イギリスのケン・ローチ監督が、カンヌ国際映画祭で『麦の穂をゆらす風』に続く2度目のパルムドール(最高賞)に輝いた作品。前作『ジミー、野を駆ける伝説』で一度は引退を表明した80歳の巨匠が初めてデジタルで撮った作品だからか、どこか空気感が軽やか。常に労働者や社会的弱者に寄り添って映画を作り続けてきた彼には、『麦の穂~』『大地と自由』のような重厚な作品もあるけれど、こういうハンドメードな作品の方が代表作に似つかわしいと思う。

 心臓の病で医師から就労を止められた59歳の大工ダニエルと、職業安定所で知り合ったシングルマザーの家族が、官僚的で融通の利かない国の制度に翻弄(ほんろう)される…という『リフ・ラフ』『レディバード・レディバード』の頃に戻ったかのようなストレートな社会派映画だ。引退を撤回してまで撮りたかった題材だけに、原点回帰の一作といえる。一方で、周囲に救いの手や共感者を配している点は、近年の特徴でもある。そのせいか、登場人物に対してだけでなく観客にも寄り添っている印象を覚えた。

 それが顕著に表れているのがラスト。本来ならケン・ローチのような良識のある映画作家であれば、クライマックスにスピーチは持ってこないはず。言葉頼みで、視覚的(つまりは映画的)ではないから。あえて高いハードルを選んだのは、観客を感動へと導きたかったためだろう。★★★★★(外山真也)

監督:ケン・ローチ

出演:デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ

3月18日(土)から全国順次公開


(共同通信)