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<隠れた名盤> 三田寛子『GOLDEN☆BEST コンプリート・シングルズ』 この表現力で歌手を続けていたならば…

 三田寛子『GOLDEN☆BEST コンプリート・シングルズ』

 現在は梨園の妻や母としても有名な三田の、歌手時代のシングルをまとめた2枚組。

 DISC1は、82年のデビュー曲『駈けてきた処女(おとめ)』が“音程が自由すぎ”と揶揄され、更に2作目『夏の雫』がそれ以上に素っ頓狂で衝撃的だが、どちらも井上陽水のメロディー自体が罪作りな気がする。実際、5作目の村下孝蔵カバー『初恋』あたりから、和の情景を想起させる持ち味が出始める。

 DISC2は、奇跡の大逆転を狙ったのか、チェッカーズの立役者である芹澤廣明作曲のポップスから、小椋佳作曲のフォーク調まで更に幅が広がる。その中でも後半の6曲が印象的。中島みゆきや村下孝蔵の切なさを丁寧に表しつつ、ラストのフレンチポップス風の『TA-TI-TA』では声量を抑えることで冷ややかな恋が見えてくる。この表現力で歌手を続けていたならばと、つい考えるほどだ。

 本作を聴けば、第一印象が良くなかった相手でも、自分も相手もその後の成長があると信じる事ができ、再会したいと思うはず。

(ソニー・2CD 3000円+税)=臼井孝


GOLDEN☆BEST コンプリート・シングルズ
三田 寛子
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(共同通信)