社会

職人の本懐 益城の被災2寺に「自信作」

寄贈される仏壇と作者の中島さん=福岡県八女市亀甲で2017年1月5日、中村清雅撮影

 国の伝統的工芸品に指定されている「八女福島仏壇」の職人、中島正之さん(79)=福岡県八女市=が、熊本地震で被災した熊本県益城(ましき)町の専寿(せんじゅ)寺と寿徳(じゅとく)寺に仏壇を1基ずつ寄贈する。いずれの寺も地震で本堂が全壊し、住職が住む庫裏(くり)の仏壇が破損していた。両寺院は、仏壇の産地ならではの支援に「復興のよりどころにしたい」と喜んでいる。

 中島さんは、製作工程が6部門に分かれている八女福島仏壇で、最終的な組み立てや金箔(きんぱく)貼りなどを担当する仕上げ部門の職人。15歳で弟子入りして腕を磨き、八女福島仏壇伝統工芸士会の会長も務めた。これまで寺に仏壇を納めたことが何度もあっただけに、熊本地震で寺も大きな被害を受けたことを知ってショックを受け、職人として支援を思い立った。

 寄贈するのは約30年前、仏壇の全国コンクール向けに製作して入賞した2基。どちらも中島さんが設計した仏壇で、大きい方は扉を開いた時の幅が2.5メートル、高さは1.8メートルあり、市場価格は約1500万円するという。もう1基も幅1.8メートルで約1000万円。何度も業者から売却を依頼されたが、中島さんが「自身の最高傑作」として自宅で大事に保存していたという。

 昨夏に中島さんが八女市を通して益城町に寄贈を打診。仏壇は浄土真宗本願寺派の様式のため、町内にある同派の寺で被害が大きかった両寺に贈り、庫裏に安置されることになった。今月15日に中島さんが専寿寺の仮設の本堂に2基を運搬する予定で、一旦そこに置いて両寺の復興を見守るという。

 専寿寺の高千穂義静(ぎじょう)住職(71)は「普段見ないような大きな仏壇で、大変ありがたい」。寿徳寺の河辺裕司住職(38)は「受け入れ施設はまだないが、早くお迎えできるようにしたい」と感謝する。中島さんは「職人としての誇りだった仏壇で復興の役に立てるのなら本望だ」と話している。【中村清雅】


(毎日新聞)