広がる空と海 2億年の時刻む 神の山


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クシマガヤームイの遊歩道を上ると、360度の絶景が広がる。天気が良ければ遠く与論島まで望める=14日、本部町山里(小型無線ヘリで又吉康秀撮影、補助・諸見里真利)
テッポウユリが咲き誇り、多くのチョウが舞うクシマガヤームイの遊歩道=14日、本部町山里

 県道115号を本部小学校方面から今帰仁城跡向けに車を走らせるとテッポウユリとイジュの花が出迎える。しばらくすると石灰岩がむきだしの尖(とが)った岩山・クシマガヤームイが現れる。方言で「腰が曲がった」という意味の円すいカルストだ。遊歩道を上ること5分、視界が広がる。切り立った岩の間から東シナ海が見下ろせ、心地よい風が吹き渡る。

 本部半島の円すいカルストは、隆起したサンゴ礁の石灰岩が2億年以上かけて雨水や地下水などに浸食され形成された。えぐられたくぼ地と円すい状の丘の高低差が大きいのが特徴で、日本ではここでしか見ることができない地形だ。ミラムイ(本部富士、252メートル)を筆頭に、本部町山里や大堂、今帰仁村今泊まで岩山が連なる。
 石灰岩採石場として利用する話が過去に何度か出た。貴重なカルスト地域を守ろうと、本部町と今帰仁村が県に公園指定を要請し、2006年3月、沖縄海岸国定公園に編入された。
 カルスト保護運動を続けてきた友利哲夫さん(83)は「この山々は本部の人の心の支え。ミラムイやウフグシクムイ(大城森)は神の山として大切にしている」と話す。
 山里集落で生まれ育ち「円すいカルスト園くしまがやぁ」を営む屋嘉比智盛さん(60)は、この岩山とともに生きてきた。子どものころはヤギや牛の草を刈り、まきを拾った。「食べ物がないから、この山でシークヮーサーや山イチゴを探した。マッコウの実を食べてよく口の中を真っ黒くしたさー」と振り返る。
 所有する岩山に遊歩道を設け、三十数年かけ家族でこつこつ頂上まで整備してきた。多くの人がその素晴らしさを知れば景観が守られるとの信念だ。「気軽に登って海を見て、何か感じてもらえばいい」と語った。
 同園の入園料は大人400円、小中学生200円、(電話)0980(47)5566。
(写真・文 又吉康秀)