パイプオルガンの“踊る音”よみがえる 北谷の教会


この記事を書いた人 新里 哲
分解修理を終えたパイプオルガンと技師のペーテライトさん(右から2人目)、糸洲さん(右端)ら=2日、北谷町の北谷諸魂教会

 【北谷】吉原の北谷諸魂教会に設置されているパイプオルガンが、設置から20年を経た1月、初めての分解修理を受けた。ヒツジの皮を用いたふいごやリードなど数万点もの部品が全てオーバーホールされた。設置時の音色を取り戻した楽器を用い、26日にリサイタルを開催するオルガニストの糸洲のぶ子さん(56)は「パイプの音が踊り出すような輝かしさが戻ってきた」と話し、本番に向けた準備を進めている。

 諸魂教会のオルガンは高さ3・8メートル、幅2・7メートル、奥行き2メートル。沖縄戦の戦没者の霊を慰める精神を引き継いでいくとの決意を込めて設置が決まり、1996年にドイツに注文し、同年末に設置された。

 大規模な点検修理が必要な年限を迎え、鍵盤が戻らないなどの不具合も出始めたため、設置した際と同様に、信者らを中心に資金を造成し、修理を決めた。

 ドイツ・ボッシュ社から派遣されて設置を担当した技師のヨーク・ペーテライトさん(59)が今回も来沖。広島県でオルガン工房を構え、定期的に調律を担当してきたパイプオルガン製作マイスターの中井郁夫さん(62)と共に、1月中旬からの半月間、作業を進めた。

 内部から、パイプはもちろん、バルブやバネに至るまで全ての部品を取り外し、点検。修理、交換して再び据えつけた。

 中井さんによると、パイプオルガンは手入れを続けることで、200年ほどは使うことができ、スイスにある15世紀の楽器が最古だという。ペーテライトさんは「丁寧に使われてきたことが分かった。弾けば弾くほどなじんでくる。これからもたくさん弾いてもらいたい」と話した。

 修理後初の演奏会となるリサイタルは、フランスの作曲家クープランの作品で演奏に45分ほどかかる「修道院のミサ」などを予定。糸洲さんは「戦後72年たっても平和な島を取り戻せていないが、闇の中にあっても光を見失わず、希望を持って進んでいくことを確認したい」と話した。

 リサイタルは26日午後4時から。一般2千円、中学生以上千円。予約が必要。問い合わせは(電話)080(2791)8052、チャーチさん。

英文へ→Pipe organ at church in Chatan revives its timbre