県警が辺野古取材妨害 記者、映画監督を排除


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県警に強制排除される市民を撮影中に妨害を受ける本紙記者(中央)=20日、名護市辺野古

 【辺野古問題取材班】名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ前で20日、県警の機動隊員らが、抗議活動をする市民を取材していた本紙記者らを力ずくで現場から引き離したり、撮影を中止させたりするなどして取材活動を度々妨害した。

 午前11時20分ごろ、市民らが座り込むゲート前の国道で、機動隊員2人が突然、写真を撮る本紙記者の両肩をつかみ、撮影現場から遠ざけた。記者が振り払おうとしたところ、眼鏡が落ち破損した。
 午後1時40分すぎには、沖縄防衛局が設置した突起付きの鉄板に座り込んだ市民が強制的に排除される様子を撮影していた同じ記者に対し、機動隊員が数人で取り囲み、「邪魔だ」と怒鳴り声を上げた。隊員らは撮影を中断させ、鉄板の上から外に力ずくで押し出し、戻れないように立ちはだかった。隊員は「また眼鏡が壊れるぞ」などと威圧した。
 さらに同じ鉄板の上で取材していた本紙の別の記者に対しても、現場指揮役の警察官が、社名が見えるように首からつり下げていた腕章を無断で手に取り、「琉球新報か」と問いただした上、現場から出るよう繰り返した。
 その直後に「連れ出せ」と複数の機動隊員らに命令し、隊員らは記者の背後から腕や肩をつかみ強制的に外に押し出し、戻れないようにした。この記者は座り込んだ市民の腕を警察官がねじ上げる様子などを撮影している途中だった。
 同じように撮影していた映画監督の藤本幸久さんは機動隊員3人に両手足をつかまれ持ち上げられた。藤本さんは「撮影している人から真っ先に排除している」と指摘した。
 記者らが排除される様子をすぐ近くで見ていた沖縄合同法律事務所の赤嶺朝子弁護士は「記者たちは当然の取材活動をしていただけで、無理な取材をしているようには見えなかった」と指摘した。その上で「撮影しているだけの記者を強制的に排除するのは報道の自由の侵害だ。県民は報道によって何が現場で起きているのかを知るわけで、報道の阻害は許されるものではない」と強く批判した。
 記者の排除について、県警本部警備2課の担当者は「取材を規制するつもりではなくて、安全確保の観点から(記者を)外に出す措置を講じた」と話した。

◆報道の自由侵害
 潮平芳和・琉球新報編集局長の話 本紙記者は琉球新報の腕章を身に着け、住民の抗議行動を記録する正当な取材をしていた。
 警察官が記者を強制的に排除したことは明らかな取材妨害であり、報道の自由を侵害するもので強く抗議する。

◆抗議活動の女性、救急搬送される 県警の排除で
 【辺野古問題取材班】名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ前では20日、基地建設に抗議する市民らを県警の機動隊が強制排除し、女性(84)=名護市辺野古=が救急搬送された。市民1人を3、4人で取り囲み足を抱えて運ぶ、両脇を抱え、無理に歩かせ転倒しそうになる場面もあった。山形にとがった鉄板の上を引きずられ背中を痛めた人もいる。市民の腕をひねり上げる警察官もいた。 沖縄平和運動センターの山城博治議長は「人が足りない。全県から集まってほしい」と呼び掛けた。三宅俊司弁護士は「彼らは警察じゃない。国家権力を背景にした暴力団だ」と指摘した。
 後頭部を強打した女性は、名護市の県立北部病院に運ばれた。女性は基地建設に関わるとみられる工事車両を止めようと、車両の一部にしがみついていた。警察官4、5人が囲み、引き剥がしたところ転倒したとみられる。
 県警警備2課は、女性が転倒し救急車搬送された件について「警察官によって転倒したという事実はない」とした。