PFOSに低体重傾向 乳児期に感染症リスクも 北海道で母子調査


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 北海道大環境健康科学研究教育センターの岸玲子特別招へい教授らが実施した北海道内の母子を対象にした健康追跡調査で、有機フッ素化合物PFOSの母体の血中濃度が高くなるほど、4歳児までの乳幼児が感染症にかかるリスクが増加することや、女児の低体重出生の傾向が確認されたことが分かった。

 岸氏らは2003~09年にかけて道内の37医療機関を受診した妊婦とその子ども1万7869組を対象に、出生記録や生活習慣などに関する基礎アンケートを実施。特異ケースなどを除外して対象を無作為に抽出し、血液サンプルの提出などの追跡調査にも協力を得られた1558組を調査した。

 その中で母親の血中PFOS濃度に応じて4グループに分けたところ、最も濃度が高いグループの子どもは最も低いグループに比べ、中耳炎や肺炎、ウイルス性呼吸器感染症、水ぼうそうなどの感染症にかかるリスクが1・61倍だった。

 また、血中のPFOS濃度が高い母から生まれた子は、アレルギー症状を患うリスクが低下することも確認された。岸氏らは母体から子に移行したPFOSが免疫抑制をもたらしている可能性があるとしている。

 また、札幌市内でより詳細な追跡調査に協力を得られた母子428組(02年7月~05年10月)を対象にした分析では、母親の血中PFOS濃度が2倍高くなる場合に子どもが低体重で生まれるリスクを計算すると、マイナス148・8グラムとなった。この低体重出生の傾向には性差があり、女児で強く出た。

 分析結果は18年度の北海道公衆衛生学雑誌などで発表している。岸氏らは有機フッ素化合物の影響について「最も脆弱(ぜいじゃく)な時期である胎児期の暴露による子の健康への影響が懸念されている」とし、思春期の発達など長期的に及ぼす影響を追跡調査する必要があると指摘している。 (島袋良太)

用語:PFOS(ピーフォス) 有機フッ素化合物の一種。発がん性などが指摘され、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で国際的に製造・使用が制限され、国内でも一部例外を除き原則的に使用・製造が禁止されている。県内7市町村に供給する北谷浄水場の水源から高濃度で検出されて問題化し、米軍嘉手納基地が汚染源だと指摘されている。