「首里城は沖縄文化の魂」「言葉も出ない」 首里城火災に専門家ら絶句


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炎上する首里城の正殿=31日、那覇市

 火災で全焼した首里城正殿について、琉球史に詳しい県立博物館・美術館館長の田名真之さんは31日午前、「首里城は沖縄文化や琉球王国の象徴であり、ある種の魂だ。大きなショックを受けている。県民にとっても大きな損失だ」と衝撃を隠しきれない様子だった。1992年の首里城正殿復元に当たっては、沖縄戦で失われた資料が多い中で関係者が調査・研究を重ねたことに触れ「鎌倉芳太郎氏が残した記録など、戦前の資料を寄せ集め、一つ一つ造り上げた」と振り返る。

 首里城正殿の特徴について「ヤマトでもない、中国でもない、沖縄唯一の様式だ。何百年の歴史を振り返りながらの作業だった。職人たちも、技術を学びながら造り、再確認にもつながっていた」と指摘。「数日後には首里城では組踊の上演も予定されていた。新たな文化が発信されていく舞台だった」と声を落とした。

 今後の修復へ向けては「復元当時には分からなかったことが明らかになったこともあると思う。復元の時に蓄積された英知を検証しつつ、修復していく必要がある」と強調した。

 沖縄考古学会顧問、琉球弧世界遺産学会前会長でグスク研究所主宰の當眞嗣一さんは「驚いて何も考えられない。私たちの先人たちが時間をかけてやっと復元した首里城がほんの短い時間で焼け落ちた。本当に言葉も出ない」と絶句。「世界遺産は建物だけではなく考古学的な遺跡として評価を受けている。心配なのは首里城で保管されていると思われる宝物や美術品など文化遺産だ。建物は時間がかかっても復元できるが、文化遺産は焼けるとどうしようもない。金額ではなく琉球文化の核になるもの。戦火をくぐり抜けて保管されてきたものだけに無事に残っているかどうか」と声を震わせた。【琉球新報電子版】