「現場はここだ。とにかく住民目線で」 調査ずさん地元紙暴く 配備の行方―秋田と地上イージス(1)


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防衛省の調査報告書のミスについて報じる6月5日付の秋田魁新報の紙面

 この夏、ある地方紙の記事が国の調査のずさんさを暴き、「結論ありき」で進もうとしていた計画に待ったをかけた。防衛省による地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備に関する秋田県の地元紙・秋田魁(さきがけ)新報の報道だ。事実と異なるデータに基づき配備場所が決められていたことが明らかになり、同省が「唯一の適地」とした根拠は大きく揺らいだ。

 「配備先を秋田、山口で最終調整」。配備を巡って秋田がクローズアップされたのは、2017年11月の全国紙の報道がきっかけだった。浮上したのは秋田市の中心部に近く、住宅密集地に隣接する陸上自衛隊新屋演習場。なぜこんな場所がミサイル基地に―。突然降って湧いた計画に地元では戸惑いが広がった。

 在京メディアの報道が先行していた当時、秋田魁新報の政治経済部長だった泉一志報道センター長(53)には「秋田にミサイル基地ができるという大変な話が中央の情報で書かれ続け、決まっていくのか」という懸念があった。社内に安全保障や防衛問題の担当記者はいない。「でも現場はここにある。とにかく住民目線、地元視点で書いていこう」。部署の垣根を越え、手探りの取材が始まった。