放水銃1基使えず 消火活動時 イベント舞台も妨げ 首里城焼失1カ月


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 那覇市首里当蔵町の首里城で正殿など主要7棟が焼失した火災で、正殿周辺に設置された消火設備「放水銃」を消防隊員が使用しようとしたが、正殿裏手の1基の収納ぶたが開かずに使用できない状態だったことが29日、分かった。火災発生から1カ月を前に、那覇市消防局が同日開示した当日の活動報告書で明らかになった。

火災から1カ月、龍潭から変わり果てた首里城を眺める修学旅行生ら=29日午前、那覇市首里(喜瀨守昭撮影)

 さらに正殿正面の他の2基の放水銃は使用できたが、火災翌日に予定されていたイベント用舞台が放水を妨げ、一時的に消火活動の支障となったことも判明。厳しい状況下で消防隊員らが消火活動に当たった実態が浮かび上がった。

 10月31日の火災から1カ月が経過するが、現段階で出火原因は特定されていない。県警は電気系統設備が集中し、火元として有力な正殿北東側から見つかった金属類の鑑定を科学捜査研究所で続けている。

 放水銃は正殿外部の初期消火や延焼防止のために設置され、火災発生時に手動で正殿の屋根上部まで放水できる。北側、東側にそれぞれ1基ずつと正面の御庭に2基の計4基設置されていた。過去には南側にもう1基あったが、2013年に国が撤去した。火災発生後、城内の警備員も使用を試みたが、火の手が強く使用できなかった。

 活動報告書によると、119番通報があった10月31日午前2時41分から17分後に活動を開始した国場小隊は、正殿裏手の東側に設置された放水銃を使用しようとしたが「収納ぶたが固定され開かない」状況に見舞われた。

 通報から15分後に現場で活動した西高度救助第1小隊は正殿正面の2基を使って放水したが、「舞台装置が放水銃正面に位置し、注水位置が限定的」になった。このため隊員が舞台を壊し放水したが、十数分後に急に放水量が低下した。「正殿への有効注水は不可となり、正殿正面の火勢は急にいきおいを増し予想を上回る状態で延焼拡大した」と記されている。正殿北東側の放水銃は使用された。

 また報告書には屋内外の消火栓を使用したが水圧が下がり、一時使用できなかったことも記されていた。