振動で壁に亀裂 金武伊芸区米射撃訓練 生活圏の危険浮き彫り


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
米軍の射撃訓練に伴う振動が原因とみられる壁の亀裂=6日、金武町伊芸

 【金武】早朝から夜中まで米軍キャンプ・ハンセンからの射撃音が響く金武町伊芸区。5、6日には米軍の照明弾3発が相次いで区内で見つかり、危険と隣り合わせの生活が改めて浮き彫りになった。周辺地域では日本復帰前から流弾事故などが相次ぎ、区民が負傷したほか、不発弾の爆発に巻き込まれて死傷した人もいる。

 伊芸綾子さん(72)が経営する伊芸ストアの壁には小さな亀裂がある。新築した20数年前からある亀裂は、米軍の射撃演習による振動が原因とみられる。周辺の住宅の壁にも同じような亀裂があるという。

 生まれ育った場所で、米軍の射撃訓練などに伴う事故が繰り返されてきた。今回も「またか」と思う一方、「孫たちが遊んでいる時に万が一落ちたらと考えると怖い」と不安を語る。

 1964年、米軍の小銃弾が民家の屋根を貫通し、家の中にいた当時19歳の女性の太ももに直撃した。重傷を負った女性は伊芸さんの三つ年上で、同じ小学校出身。幼なじみのような存在で「ショックだった」と話す。被害に遭った女性の包帯を巻いた姿が今も目に焼き付いている。

 区行政委員も務めた山里和信さん(72)は、今回の照明弾落下に「流れ弾もいつ飛んでくるか分からない」と不安を募らせる。約50年前、米軍機の訓練中に破裂した爆弾の破片が近くの民家の屋根を突き破り、床に突き刺さったという話を覚えている。「公になっていない事故もあるのではないか」と推測する。

 ベトナム戦争当時、米軍はキャンプ・ハンセンで照明弾訓練を繰り返していた。60代女性は「花火みたいに明るかった」と話し、当時の光景を思い出すという。66年、基地内で薬きょう拾いをしていた高校生らが小銃弾の爆発に巻き込まれる死傷事故も起きた。「(基地になっている)山にはたくさん不発弾があるはず。怖い」と語った。