「条例なくなっても住民に関係ない」 市議から人権軽視の発言相次ぎ…市民から批判とあきれ顔 自治基本条例廃止案否決には拍手と歓声


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石垣市自治基本条例廃止条例案の審議を見守る傍聴席の市民ら=16日、市議会

 石垣市自治基本条例を廃止する条例案が採決された16日、石垣市議会には条例に反対する市民らが集結し、否決を求めた。傍聴席を埋め尽くした市民からは、廃止条例を提案した石垣亨市議(自由民主石垣)の答弁に対して「暴論だ」「取り消せ」など批判の声が上がり、議長が制止する場面もあった。結局、廃止条例は賛成少数で否決され、市民からは大きな拍手と歓声が上がった。

 「この条例がたとえなくなったとしても、多くの住民の皆さんにはあんまり関係がない」。廃止条例を提案した石垣市議の答弁に、あきれ顔の市民からため息が漏れた。「市民」の定義を問われたのに対し市議から「市民もどきも入れると…」など、多様性や人権を軽んじるような発言が相次ぐたびに批判の声が議場を包んだ。

 議会を傍聴した渡久山修さん(63)=農業=は「廃止ありきの上っ面な議論だ。市民のためにどうあらねばならないのかを議論するのが議会のはずなのに、市民そっちのけで議論をしている」と指摘した。与党市議の答弁や賛成討論に対して「地域の子どもたちの手本になるような発言ではなかった」と切り捨てた。

 同市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う「市住民投票を求める会」のメンバーらも傍聴席から議論の行方を見守った。会のメンバーらは自治基本条例を根拠に、住民投票を求める約1万4千人分の署名を集めてきた。だが、与党多数の市議会が住民投票条例を否決したため、同会が中心となって市を提訴した。

 会の事務局を務める宮良央さん(29)は否決になったことに対して「正直ほっとしている」としつつも「住民投票を求める裁判をしているタイミングで石垣の憲法である自治基本条例を廃止しようとしていた。住民投票を求める声や根拠となった条例を悪者にしたいという圧力や怖さを感じた」と語った。

 同じく会のメンバーの宮良麻奈美さん(27)は「自治基本条例は民主主義の一定の成熟度を満たしているからこそ制定された。裁判は続いているので、否決されたことに安心せず、活動を続けたい」と語った。