支払い義務はないのに…「思いやり予算」1年で1974億円 子どもの貧困対策152年分相当 78年からの累計は7兆円超える


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 1960年の日米安全保障条約改定から60年がたつ。沖縄にとっては安全保障の名の下で基地被害にさらされてきた60年だ。県外の米軍基地は縮小された一方、沖縄への基地集中の割合は高まった。安倍政権は「反対」の民意を押し切って米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を強行している。政府の米国に追従する姿勢が沖縄の犠牲を助長してきたともいえる。政府は米側の求めに応じる形で自衛隊の活動範囲を拡大し、支払い義務のない在日米軍駐留経費を肩代わりしてきた。その「思いやり予算」は78年から2018年度までに累計で7兆2685億円に上る。

 本来は米国が負担すると定められている在日米軍駐留経費の7割を日本は「思いやり予算」として負担してきた。米側の要求に応じ膨らみ、2019年度は1974億円に上っている。予算の主体は異なるが、さまざまな公共事業と比較してみる。例えば政府が沖縄の「子どもの貧困」緊急対策として投じている予算(19年度約13億円)の152年分だ。

 沖縄都市モノレール(ゆいレール)の延伸について県が示している試算に当てはめると、16駅18キロを建設することができる額だ。内訳は(1)奥武山公園駅から豊見城市を通って糸満市までの9駅(980億円)(2)てだこ浦西駅から西原マリンタウンまでの4駅(580億円)(3)同駅から琉球大学前までの3駅(400億円)―。

 首里城火災で焼失した建物の建設費用は沖縄総合事務局によると約73億円。19年度の「思いやり予算」は首里城の焼失分の約27倍に当たる。

 名護市辺野古の新基地建設に関する19年2月の県民投票では5億5千万円の費用がかかった。県民の一部や保守系政治家は税金の使い道として疑問を投げ掛けた。19年度の「思いやり予算」は県民投票の経費の359倍だ。

 日米地位協定に照らして支払い義務のない米軍駐留経費の肩代わりは、1978年に本格化した。当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりを持って(米軍に)対処する」と表現し「思いやり予算」と呼ばれる。

 県内の米軍基地返還や訓練移転の費用、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を含む米軍再編の経費も日本が負担している。米軍人・軍属に税金の支払いや各種料金を免除するなど優遇策も実施している。米国防総省が米軍駐留経費の負担割合について最後に公表した2004年の報告書によると、日本は米軍駐留経費のうち74・5%を負担し、他国の負担割合を大きく上回っている。21年3月に想定される新協定の締結に向け、トランプ米政権は日本負担の増額を求めている。