日米地位協定60年 変わらぬ米軍優先 捜査、原因究明の壁


この記事を書いた人 Avatar photo 米倉 外昭

 日米が1960年に新安保条約を締結してから19日で60年となる。日米地位協定は同条約と同時に、それまでの日米行政協定に代わる新協定として締結された。米軍機の米軍関係者による事件事故や、米軍基地から流出したとみられる有機フッ素化合物PFOSやPFOAなど環境問題は後を絶たず、地位協定が捜査や原因究明の壁になってきた。

 これまで沖縄県と県内基地所在市町村でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)や米軍基地が所在する15都道府県でつくる全国渉外知事会は、同協定を抜本的に見直すよう政府に求めているが、60年間改定されたことはない。

 日米地位協定の不平等さが顕著に表れているのが、裁判権の問題だ。米兵が公務中に罪を犯した場合、米軍が裁判で処罰する第一次裁判権があるため、原則として日本の法律で裁くことができない。

 公務外の場合は日本側に第一次裁判権があるが、53年に日米合同委員会で「日本は米国に対し、特に重要と考えられる事件以外は裁判権を行使しない」という密約が結ばれており、日本平和委員会が情報公開で入手した資料によると、2018年に日本国内で発生した米軍関係者による一般刑法犯は8割が不起訴になっている。

 米軍犯罪の身柄引き渡し問題もある。被疑者が基地内に逃げ込むと、米軍は起訴されるまで日本側への被疑者の引き渡しを拒否できる。1995年の少女乱暴事件以降は、凶悪事件に限り米側が「好意的考慮」を払うこととなった。基地内からとみられるPFOS、PFASの流出や、燃料流出事故などが発生した際、自治体が立ち入り調査ができないことも問題となっている。

 政府はこれまで「運用改善」での対応に終始し、沖縄側が求めてきた抜本的見直しを拒否している。