首里城火災なぜ? 原因特定できず捜査終結 県民に戸惑い「防火対策生かせるのか」


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
首里城の火災現場で実況見分を行う県警や消防隊員ら=11月1日

 昨年10月に発生した首里城火災の捜査終結を発表した県警は29日の発表で「火災の刑事責任は問えない」とも明かした。火災原因が判然としない状況に、県民は「次の防火対策に生かせるのか」と疑問を呈し、国や県、沖縄美ら島財団の責任を問う声も上がる。同時に一定の区切りが付いたとして、十分な防火対策で再建に注力すべきだとの見方もある。

■「国、県、財団に責任」

 那覇市のパート女性(50)は「そもそも燃えやすい木造建築にスプリンクラーを設置しようと考えていなかった時点で、多かれ少なかれ国や県、財団に責任がある」と話す。沖縄のシンボルである首里城は「ぜひ再建すべきだ」とした上で「再建しても火災の可能性がゼロでない以上は、防火対策を徹底してほしい」と語った。

 那覇市の公務員の男性(54)は「原因が特定できなければ、どう次の防火対策に生かせるのか。『分からなかった』で終わらせるのではなく、二度とこのような火災を起こさないよう、国や県はさらに検証し、その結果を公表してほしい」と要望した。

 うるま市の会社員の女性は(37)は「誰か責任を負わせればいいという話ではないと思う。大切なのは首里城再建の機運が高まっている中で、次をどう防ぐか。こんな悲しい出来事は二度と起きてほしくない」と述べた。

■「仕方がないのか…」

 首里自治会長連絡協議会の宮良吉雄会長は「原因が分からない様子はずっと感じていたが、結果を聞いて改めて残念だ。3カ月たって(出火原因が)特定できなかったならしょうがない。電気系統が出火に関係するならば、再建する時は、このような事故が起こらないように考慮してほしい」と話した。

 前県立博物館・美術館館長の安里進さんは「念入りに調べても分からなかったことは、仕方がないのかなという印象だ」との見方を示す。再建へ向けた国の技術検討委員や美術工芸品の修復手法などを検討する沖縄美ら島財団の有識者委員も務めており、「従来の文化財の火災対策の概念ではなく、思い切ったことを模索すべきだ。正殿周辺の利活用も安易に広げず、燃える原因をできるだけつくらないことが必要だ」などと指摘した。