悲しみと絶望を希望と愛に 首里城再建への思い絵画に フランス在・幸地学さん


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幸地 学さん

 フランスに住む那覇市出身の美術家・幸地学さん(65)がこのほど、昨年10月末に首里城が火災で焼失した悲しみや再建への思いを込めた絵を完成させた。作品名は「悲しみと絶望を希望と愛に変える魂の力」。公開・展示の時期や場所を検討している。昨年4月に起きたノートルダム寺院(大聖堂)火災後、同寺院の火災を題材に描いた作品「破壊から蘇る希望と愛」はパリのIMA(アラブ世界研究所)フランス国立美術館で展示され、同館ホームページでも公開されている。二つの文化遺産それぞれが火災に見舞われた深い悲しみとともに、復活へ向かう思いを絵筆で表現した。

首里城火災を題材にした幸地学さんの作品「悲しみと絶望を希望と愛に変える魂の力」

 ノートルダム寺院の火災時、パリ郊外の自宅にいた幸地さん。テレビのニュースで火災を見て「パリの一部を失うような悲しい気持ちに陥った」。首里城火災は、幸地さんが沖縄で個展を開催中に発生した。「沖縄の大事なものが大きく失われるような強い残念な気持ちになった」と振り返る。ノートルダム寺院の絵は昨年夏ごろに、首里城の絵は火災の数日後にそれぞれ構想し、両作品とも昨年12月に完成させた。

 首里城とノートルダム寺院について、幸地さんは「二つとも人類の文化遺産だ」と指摘する。ノートルダム寺院は「パリ市民の歴史の象徴であり、アイデンティティーでもある」「全ての人種を受け入れる自由と愛の象徴でもある」と語り、フェニックス(不死鳥)のように蘇(よみがえ)る思いを絵に表現した。

 首里城については「沖縄の歴史であり文化だ。戦争で悲惨にも破壊された琉球人としての悲しみと怒りの思いもある」と語る。

 「この島の人々には平和と人間愛を持つ優しくも強い生き方がある。首里城が世界から集まる人々の自由と開かれた人間共同体として感じられる場になることを希望せずにはいられない」と期待を込めた。
 (古堅一樹)