「帰郷か、とどまるか」緊急事態発令前、揺れる沖縄出身者 「東京に帰れない」人も


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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が7日にも緊急事態宣言を発令する。宣言を前に、感染者が増え続ける都市部から沖縄への帰郷を急ぐ人も出始める。沖縄県内では6日、新型コロナの感染者が新たに6人、確認された。石垣市は来島自粛を呼び掛け、県も来県自粛要請の検討を始めた。県は「今後の急速な感染拡大に対する重要な対策を迫られている」(玉城デニー知事)状況で、感染拡大阻止の正念場を迎えている。

 新型コロナウイルス感染症を巡り、国は7日にも感染拡大が懸念される7都府県を対象に緊急事態を宣言し外出自粛を求める。県も沖縄への来県自粛要請を検討する。対象7都府県には進学や仕事で在住する県民も多い。沖縄と大都市圏との移動制限が現実味を帯びる。感染を避けて駆け込みで避難する人もいれば、ウイルスを持ち込まないよう県外にとどまることを決めた人もいるなど、県出身者も揺れている。

 国内で最も感染者が多い東京都内の大学に通う女性(23)は、都内での感染拡大を見越して3月28日に沖縄の実家に戻った。「ほかの県人や友人も東京に残っていて心配だ。(影響が)長引くだろうし、東京に戻る見通しが立たない。沖縄は危機感が薄いので、もっと注意喚起すべきだ」と東京との温度差を指摘した。

 県出身の学生が住む南灯寮(東京都)には現在10人が在寮している。寮の管理人によると、4月からは新入生も含めて三十数人が在寮するはずだったが、新入生と在学生ともに半数以上が沖縄に戻った。大学の授業開始がずれ込み、アルバイト先からも休業を通達され、実家から戻ってくるよう促されているという。東京での感染拡大や緊急事態宣言の動きを受けて4日に2人、5日に1人が沖縄に帰った。

 県外にとどまることを決めた県出身者もいる。東京沖縄県人会の仲松健雄会長は「帰りたい気持ちもある」としながら、県が県民に旅行自粛を要請したため、沖縄への渡航を控えている。「県出身者の人材派遣や建設会社も売り上げに相当影響があると聞く。一日も早い正常化を祈るのみだ」と強調する。

 沖縄を訪れている旅行者にも動揺が広がる。3月30日から家族5人で沖縄を旅行する、東京都港区の自営業男性(39)は「こんな状況では帰るに帰れない。どうすればいいのか」と頭を抱えた。旅行中、周囲から感染を疑われるなどして肩身の狭い思いをすることもあった。男性は「タクシー運転手から『どこから来たのか』と不審がられた。感染リスクも高まっているし、帰るタイミングを失った」と声を落とした。