県、軽症者収容へ調整 コロナ病床確保へ対策


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新型コロナウイルス感染症の軽症者受け入れで「生活に必要な家具などはそろっている」と話すMr.KINJOの下地ななえ社長=9日、那覇市

 新型コロナウイルス感染症の拡大により病床が足りなくなる事態を避けるため、県は宿泊施設での軽症患者受け入れに向けた調整を始めている。県の保健医療部と文化観光スポーツ部は8日に、県ホテル協会と県ホテル旅館生活衛生同業組合の代表者を県庁に呼んで意見交換した。受け入れ意思の有無などについて個別のホテルへの聞き取りが進められるが、具体的な条件について情報が不足していることもあり各施設の反応はさまざまだ。

 厚生労働省は2日付で、新型コロナウイルスの感染の拡大状況に応じて、軽症者や症状がない感染者については自治体の用意する施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知している。
 県は厚労省から届いたマニュアルに基づいた対応が県内で可能かどうか、ホテル業界への聞き取りを始めたほか、先行地域の事例を踏まえてホテル自ら名乗りを上げる動きもある。
 宿泊特化型施設「Mr.KINJO」などを展開するMR(那覇市、金城太一代表)は、軽症患者を積極的に受け入れる方針を独自に表明している。同社の下地ななえ社長によると、6日に県の担当部局に出向き、受け入れが可能であることや療養に使う際の客室の設備や体制について伝えたという。
 本島中部と南部の病院近くにある施設それぞれ1棟ずつを貸し出す準備をしており、40~60室を提供できる。洗濯機や乾燥機、キッチン、テレビを各部屋に備え付けてあり、長期滞在に適しているとしている。
 下地社長は「病院に患者があふれかえる前に早めに動かないといけないという危機感がある。1社が手を挙げれば、周辺の施設にも波及するのではないか」と話した。
 県は、宿泊施設で軽症者を受け入れる場合の借り上げ金額や借り上げ数などの条件を「検討中」としており、宿泊施設や各団体に提示するには至っていない。県保健医療部の担当者は「さまざまな方策を考えている。どの施設を使うかや条件については検討中だ」と話す。
 県との意見交換で招集を受けた県ホテル旅館生活衛生同業組合は、翌9日午前に会員数社を集め、受け入れに必要な条件などについて声を聞いた。
 会員から「受け入れた場合の食事の提供はどうなるのか」「営業再開する時に風評被害は払拭(ふっしょく)できるのか」といった意見が上がったといい、10日にも改めて県と調整を行う予定だ。
 県ホテル協会も、受け入れの意思があるかなど会員へのアンケートを実施し、受け入れ可能なホテルは県に紹介していく考えだ。
 あるホテル関係者は「宿泊施設で患者を受け入れざるを得ない状況はすぐ来る」と危機感を示す。一方で、国が定めるガイドラインはあるものの、客室の清掃やスタッフの配置といった細かい条件は県で提示する必要があり、宿泊関係者らは情報を求めている。
 県ホテル旅館生活衛生同業組合の担当者は「情報がない中では手を挙げづらいが、なるべく協力したい姿勢ではある」と話した。 (中村優希)