琉球王国ゆかりの川に泡消火剤 「あってはならない事故」文化財ガイドが憤り


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泡消火剤流出のあった宇地泊川で、察度王時代に思いをはせる下地昭榮さん=16日、宜野湾市

 【宜野湾】米軍普天間飛行場から有害性が指摘される有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤が流出した問題で、泡消火剤は沖縄県宜野湾市の宇地泊川(比屋良川)周辺を汚染し、19日現在も川に泡とみられる物質が一部で残る。宇地泊川は、交易で琉球王国繁栄の基礎を築いたとされる中山王・察度(さっと)とゆかりのある川と言われる。「市文化財ガイド察度の会」の下地昭榮(あきよし)さん(82)は、宇地泊川で起きた流出事故に「あってはならない」と憤る。

 下地さんによると、察度(1321~1395年)が生きた14世紀の中頃、現在の大謝名小学校や宇地泊川周辺は「港田原(ナトゥダバル)」と呼ばれる入り江だった。下地さんは、察度と交易する中国などの船が入り江に立ち寄り、湧き水「大謝名メーヌカー」などで給水していたと推測する。

 察度は宇地泊川に近い場所に住まいの「黄金森(クガニムイ)グスク」を造ったとされる。下地さんは大謝名小の近くにある楼閣跡「黄金宮(クガニナー)」が、同グスクの御嶽とみている。黄金森グスクは本島の南北をつなぐ交通の要所で、多くの人が宇地泊川を往来したと想像する。

 その歴史ある宇地泊川周辺が突然、泡消火剤の白い泡で覆われ、汚染水は海に流れた。下地さんは流出現場で約600年前の様子に思いをはせながら「生き物や人にも影響するのではないか。自然環境をしっかり守ってほしい」と求めた。(金良孝矢)