普天間流出の泡消火剤に多量有害物 宇地泊川で米指標の6倍超 本紙・京大調査


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米軍普天間飛行場から流出し、住宅地まで飛散する泡消火剤=11日午前8時12分ごろ、宜野湾市大謝名(金良孝矢撮影)

 【宜野湾】発がん性が指摘されているPFOSなど有機フッ素化合物(PFAS)を含む泡消火剤が10日に米軍普天間飛行場から流出した事故を受け、琉球新報社は11~13日に付近の河川など5地点から水を採取し、京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)に有機フッ素化合物含有の分析を依頼した。その結果、地下水汚染を判断する米国の暫定指標値PFOS・PFOA合計40ナノグラム(1リットル当たり)の6倍に当たる247・2ナノグラムが宜野湾市の宇地泊川で採取した水から検出されるなど、4地点で多量の有機フッ素化合物が検出された。米軍が泡消火剤への含有を明言しているPFOSのほかにも、PFOAやPFHxSなどの有機フッ素化合物が高濃度で検出された。

 米国では米環境保護庁(EPA)が策定した暫定指標値を超えた場合、さらなる調査の実施を推奨している。今回、指標値を超えた水はいずれもPFOSよりPFOAの値が高かった。

 一般的な河川水などのPFOS・PFOAの合計含有量は1リットル当たり10ナノグラム程度。日本国内では環境省の諮問機関・中央環境審議会の専門委員会が暫定指針値として1リットル当たり50ナノグラムを提案しているが、今回検出された値はそれらを大幅に超えている。結果を受けて原田氏は「米軍基地からの環境汚染は確実に起きている」と指摘した。

 今回、採水した地点は宇地泊川周辺や浦添市の牧港漁港など5カ所。PFOS・PFOAの合計値が最も高かったのは宇地泊川で12日に採取した水の247・2ナノグラム。次いで11日に同川沿いの水たまりで採取した水の値は144・0ナノグラムと、暫定指標の3・6倍だった。

 基地内の水が暗渠を通って川と合流する地点の水は50・0ナノグラム(13日採取)と高水準だった一方、合流地点より上流の水は30・2ナノグラム(12日採取)と値は低かった。牧港漁港の海水(同)は41・0ナノグラムと暫定指標を超えた。
 (金良孝矢)


<用語>PFOS・PFOA
 有機フッ素化合物の一種。発がん性などが指摘され、PFOSは残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で国際的に製造・使用が制限され、国内でも一部例外を除き原則的に使用・製造が禁止されている。PFOAは世界保健機関(WHO)の外部機関が発がん性の恐れがある物質に指定し、主要な化学メーカーが既に自主的に使用を廃止している。物質としての安定性が高いため、環境中でほとんど分解せず、生物中に蓄積することが懸念されている。

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<調査の方法>
 10日の米軍普天間飛行場の泡消火剤流出事故を受け、琉球新報社は11日午前9時ごろ、宜野湾市の宇地泊川(比屋良川)沿いの泡が大量に付着した水たまりで採水した。12日午後7時ごろ、基地内の水が暗渠(あんきょ)を通って宇地泊川に合流する地点から約50メートル上流で採水。同7時すぎ、11日に泡が大量飛散していた宇地泊川で水を採取した。同日午後7時半ごろには浦添市の牧港漁港で海水を採取した。13日午後7時ごろ、暗渠が宇地泊川に合流した約100メートル下流で水を採った。採取した水を16日に京都大学へ送り、原田浩二准教授に分析を依頼。22日までに結果が出た。分析は有機フッ素化合物PFOSと似た物質で、泡消火剤に含まれているとみられる13種類の有機フッ素化合物を調べた。