「事故の影響表れた」 国指針案5倍に県 泡消火剤流出


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泡消火剤が流出した水路付近を立ち入り調査する松川正則宜野湾市長(中央)ら=21日午後4時38分、米軍普天間飛行場(ジャン松元撮影)

 米軍普天間飛行場からの泡消火剤流出事故で、基地周辺の河川から環境省の諮問機関による暫定指針値案の約5倍に当たるPFOSとPFOAが検出された。沖縄県環境保全課は「事故の影響が表れたのだろう。県が測定した値ではないので、それ以上の評価はできない」とした。その上で「値の上昇が一過性であるかどうかも重要だ。一定期間を置いて県も再び水を分析し、影響を調べていく」と述べた。

 県も事故翌日に米軍普天間飛行場周辺の河川や湧き水を採取し、分析作業を進めている。5月上旬をめどに結果を公表する予定。県はこのうち水の流れから事故の影響を受けていないとみられる比屋良川公園付近でも採水した。

 琉球新報社の調べでは、この付近の河川水はPFOSとPFOAを合計した数値で1リットル当たり30・2ナノグラムと環境省の暫定指針値(同50ナノグラム)を下回る結果だった。一方、大量の泡消火剤が流れ込んだ宇地泊川はPFOSとPFOAの合計値が1リットル当たり247・2ナノグラムに達した。県はこの「差」について、泡消火剤の流出を反映したものだとの見方を示した。

 分析結果を受けて宜野湾市の関係者は「市も川で採水しているので、その結果と照らし合わせる参考にしたい」と受け止めた。泡が飛散した地点で高い数値が出たことに「周辺住民の不安払拭(ふっしょく)に向け今後、川の状況観察も必要かもしれない」と指摘した。

 市は流出事故から3日たった13日、川の上流と下流2地点で採水した。民間業者に調査を依頼し、結果が出るまで2週間程度かかるという。PFOSやPFOA、PFHxSの含有量を調べ、結果を公表する。

 環境省は分析結果にコメントできないとした。


<用語>PFOS・PFOA
 有機フッ素化合物の一種。発がん性などが指摘され、PFOSは残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で国際的に製造・使用が制限され、国内でも一部例外を除き原則的に使用・製造が禁止されている。PFOAは世界保健機関(WHO)の外部機関が発がん性の恐れがある物質に指定し、主要な化学メーカーが既に自主的に使用を廃止している。物質としての安定性が高いため、環境中でほとんど分解せず、生物中に蓄積することが懸念されている。