沖縄、夜のスポット「栄町」もにぎわいなく 飲食店「生殺し状態だ」


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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う県の休業要請は夜の街を直撃している。要請対象となっているバーやスナックのほか、対象外の居酒屋なども営業時間短縮が求められている。事業者はテークアウトなど新たな取り組みも試行錯誤しているが「休業補償してほしい」「客が来ない」と嘆く。ギラギラしたにぎわいは陰り、ネオンサインが寂しげにともる。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、臨時休業の張り紙が目立つ栄町の飲食店街=1日午後7時すぎ、那覇市安里

<那覇>栄町、笑い声かき消え

 那覇市安里の栄町市場は、いつもなら夜遅くまで多くの人の笑い声に包まれる。しかし新型コロナの感染拡大で客足は遠のき、午後8時以降も営業する飲食店はほとんど見られなくなった。ある飲食店の男性店主(38)は、テークアウト中心にした。1日の売り上げは3分の1に落ち込み、少しでも収益を上げるために閉店後もポップ作りなどに励む。県の緊急事態措置で、飲食店は休業要請の対象に含まれない。「このままでは生殺し状態だ。いっそ休業を強制にして補償してほしい」と訴えた。
 シャッターを閉めた飲食店には、店主が書いた「考えてもわからん うつさないよう、うつらないよう直接的なつながりはひかえます」との張り紙があり、葛藤しながら閉店した様子がうかがえた。

ほとんどの店がシャッターを下ろし、閑散とする「みどり街」=4月29日午後9時ごろ、名護市

<北部>「みどり街」薄暗く

 【北部】名護市中心市街地で飲食店が立ち並ぶ通称「みどり街」。新型コロナウイルス感染拡大以前は週末になると飲み歩く人たちの姿があり、深夜まで各店舗からカラオケの歌声が流れた。現在はほとんどの店がシャッターを下ろし、休業を知らせる張り紙が目立つ。静かな街にともるネオン看板も少なく、薄暗い印象だ。

 名護市で感染者が確認された4月上旬から、休業する店が一気に増えたという。名護社交飲食業組合の渡久地等組合長は「(経営が)厳しいので閉店したいという相談も寄せられている。行政に家賃の支援などを求めたい」と切実に訴えた。

人けが少ない一番街。通りの店のシャッターはほとんど閉まっている=4月30日、沖縄市中央

<中部>一番街、人けまばら

 【中部】夜になるとネオンが輝き、米軍関係者を中心ににぎわう沖縄市屈指の繁華街コザゲート通り。4月中旬ごろから飲食店は軒並み休業し、通りを歩く人はほとんどいなくなった。「経済的打撃は大きいが、しばらくはしょうがない」。ひっそりと店を開けていた飲食店の男性経営者は肩を落とす。

 近接する一番街商店街も状況は同じ。顧客の多くが地元の常連だという居酒屋「鈴々」は、営業を持ち帰り中心に切り替えて平日午後8時までの限定で店を開ける。経営者の神谷昇吏さん(72)、稲子さん(63)夫妻は「客が来ないと食材は傷むし、光熱費もかかりっ放しで大変だ。今は終息後に何ができるか考える時間にしたい」と前を向いた。

<石垣・宮古島>離島も自粛ムード覆う

 【石垣・宮古島】大型連休を迎え、例年ならば地元客や観光客で活気づく石垣市の美崎町。市内で新型コロナウイルスの感染者が確認されて以降は、にぎやかさが失われた。日が落ちると街は静けさを増し、テークアウトを行う飲食店やテナントビル外壁の照明が、かすかに通りを照らした。

 宮古島市西里の繁華街、通称「イーザト」はスナックやクラブなど多くの飲食店が立ち並ぶ。普段なら午後8時ごろには酔客が行き交うが、今は多くの店が営業を自粛する。西里で飲食店を営む50代の女性は「この状況が続くともたない。どの店も同じ状況だと思う。どうにかならないかね。毎日、ため息しかでないよ」とつぶやいた。