国民主権守るため国会監視を 上西充子法政大教授インタビュー


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「zoom」でのインタビューに応じる上西充子・法政大教授(インターネットから)

 5月3日の憲法記念日を前に、街頭で国会中継を流しながら解説を加える活動「国会パブリックビューイング」代表で法政大学の上西充子教授が、オンラインでインタビューに応じた。上西さんは3日、県憲法普及協議会などが主催する憲法講演会に登壇予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止になった。上西さんは「国民主権を守るためには国会の監視が必要だ」と語り、新型コロナの感染拡大で浮上した改憲論議に「誘導的だ」と警戒感を示した。

 ―緊急事態宣言が発出された。
 「新型コロナは未知のウイルスで感染予防のためには仕方がない面もある。ただ、もっと強制力を、という言説には注意が必要だ」
 ―私権制限の強化を求める声も上がっている。
 「順番が違う。休業要請など自粛を求める場合、まずは補償の在り方や今後の方針を示すのが先決だ。それもせずに私権を制限するのは政府の責任放棄だ」
 ―「基本的人権」と「公共の福祉」の兼ね合いは。
 「財産権の保障が明記されている憲法29条の3項には、『私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる』とある。公共の福祉を言うならば、補償ありきだ。私権制限に踏み込むのは表現の自由にも関わることでもある。議論は非常に慎重であるべきだ」
 ―緊急事態条項の創設など改憲論に結び付ける声も。
 「改正の必要はない。与党の議論の進め方は非常に誘導的だと感じる。『この道しかない』『押し付けられた憲法でいいのか』と煽るような主張も見られる。与党の中には非常に感情的な自主憲法へのこだわりを感じる」
 ―国民主権を守るには。
 「国会の監視が大事だ。コロナによる混乱で国民主権を実感している。政治への関心が高まり、国会中継を見る人が増えている。ツイッターに市民個々の声が投稿され、それが野党議員の質問につながることもある。民意を吸い上げるルートができつつある。広い意味での市民運動だ」
 ―沖縄をどうみる。
 「名護市辺野古の新基地建設問題では県民投票の結果に反して基地建設が強行されている。静岡のリニア建設問題や秋田の地上イージス配備問題などにもつながる。政府の強引なやり方は全国でみられる。沖縄の問題を放置してきたツケが表面化してきている」
 (聞き手・安里洋輔)