重度障がい者に「稼げる職場を」 介護福祉士の町田さん「人間力とデジタル活用」


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 【中部】介護福祉士でフォトスタジオ「スタジオライフワーク」の代表も務める町田守邦さん(46)=沖縄市照屋=が、重度の障がいがあっても自分らしく働き、稼げる仕事場づくりに挑戦している。日常生活の支援を行う「生活介護」と、就業継続支援を行う「就労継続支援B型」の機能を複合した多機能型福祉事業所を本島中部に立ち上げ、施設利用者には“スタッフ”として写真・動画の撮影や、企画などに携わってもらう仕組み。現在、ネット上で寄付を呼び掛けるクラウドファンディングで事業資金を募っている。

多機能型福祉事業所立ち上げを計画する町田守邦さん=14日、沖縄市

 介護福祉士や障がい者相談支援専門員として、20年以上にわたり福祉の現場を見つめてきた町田さん。身近に障がいのある家族がいたこともあり「利用者が受け取れる工賃の安さや、働き方の選択肢の少なさに違和感を感じていた」。

 忘れられない言葉がある。以前勤務していた介護施設で、若い利用者が「僕は手も足も動かないから稼げない。宝くじに当たったら夢を考える」とつぶやいたのだ。町田さんは「デイサービスなどの利用者はほとんど稼ぐすべがない」と指摘する。実際、厚生労働省の2018年度工費実績によると、重度障がい者など就労継続支援B型事業所の利用者は1月に22日利用した場合でも平均賃金は月額1万6118円で、時給にすると214円しかない。

 そこで町田さんは自身のスタジオを兼ね備えた全国的にも珍しい多機能型福祉事業所の立ち上げを決意した。事業所内のスタジオでは企画、撮影、編集、納品を、利用者のペースに合わせて一緒に行う。撮影した画像や動画は世界中にネットワークを持つ写真画像代理店などを通して販売する。事業が軌道に乗れば利用者のできること、やりたいことを広げ、さまざまな企画に挑戦していくつもりだという。

町田守邦さんが撮影した作品(提供)

 町田さんは障がいは個性でもあると指摘する。大量生産には向かないが、「人間力とデジタルをうまく活用すれば新たな仕事が生み出せる」と自信をのぞかせる。「働く喜び、給料を手にした時の達成感はきっと彼らの自信にもつながるはずです」。町田さんは障がいを理由に働くことを諦める人が一人でも減ることを願っている。

 クラウドファンディングのサイトはhttps://readyfor.jp/projects/sutudiolifework。第1段階としては、50万円を目標額にしている。

(当銘千絵)