追悼式「平和の礎近くでこそ意義」「半分だけ解決」研究者ら経緯問題視 知事再検討に


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沖縄戦で亡くなった方ひとりひとりの氏名を刻印し、沖縄の「平和のこころ」を発信する平和の礎=糸満市摩文仁

 玉城デニー知事が29日、慰霊の日の沖縄全戦没者追悼式の開催場所を再検討する考えを示したことに、沖縄戦研究者などからは「平和の礎の場所で行うべきだ」との声が上がった。県は当初、国立沖縄戦没者墓苑での開催方針を示していたことから「国立墓苑がなぜ、追悼式にふさわしくないのか問題を整理する必要がある」との指摘もあった。

 県に平和の礎近くでの追悼式の実施を求めてきた、沖縄戦研究者の石原昌家沖縄国際大名誉教授は「あらゆる戦争を拒絶する、平和の礎のところで平和宣言をすることに意味がある」と強調する。県内の識者からは「国家の施設の国立墓苑で追悼式をすることは、国家が引き起こした戦争に巻き込まれて肉親を亡くした県民の感情とは相いれない」との問題提起があった。玉城知事は新型コロナウイルス感染拡大が落ち着き、参加人数を増やせることを国立墓苑での開催見直しの理由としているため、石原氏は「問題提起に対して知事が理解を示したとは言いがたい」と述べた。

 沖縄近現代史家の伊佐眞一さんは「(開催場所の再検討を)大いに歓迎するが、なぜ国立墓苑が問題なのかきちんと整理しておかない限り、今後またこういうことが起こりうる。問題は半分くらいしか解決されていない」と行政が課題と向き合うことを求めた。

 沖縄大学非常勤講師の玉城福子さんは再検討に歓迎の意を示す一方で「国立墓苑ができるまでにどういった経緯があったのか、きちんと若い世代や県職員が共有できるような機会にしてほしい」と述べた。