沖縄「戦世とくらし」ネットで体感を 当時のレシピも 本部町立博物館が企画展


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 【本部】新型コロナウイルスの影響で中止となった本部町立博物館主催の「慰霊の日特別企画展」を、ウェブサイト上で開催しようと職員らが奔走している。自宅でも戦争と平和について学べるウェブ企画展の制作を進めている。発案した博物館の田之岡綾花学芸員(25)は「沖縄戦のことを忘れてほしくなかった。戦争当時の住民生活に自身を投影し、平和を考えてほしい」と願った。

 町内開催の企画展が中止となった4月下旬、田之岡さんは「ウェブ展示ならみんなが見られるのでは」と考えた。テーマは「戦世とくらし~戦の中の衣・食・住~」。公開は6月18日から8月30日までを予定する。

 職員が本部町出身の戦争体験者に話を聞いてウェブ企画展を制作する。田之岡さんは台湾に疎開した人に取材をした。「暮らし」のテーマ以外にもさまざまな話題が飛び出し、取材時間は2時間にも及んだ。体験者が熱心に話をする姿に「(戦争体験を)伝えたい、残したいという気持ちがひしひしと伝わった」と振り返る。

 カツオの町として栄えた本部町。戦後は食べ物が少なく、カツオの頭と骨を塩漬けにして食べたこともあった。「戦時中のごはんを作ってみよう」のページでは、当時の食事が再現できるよう、レシピが写真付きで紹介されている。

 「戦跡巡り」では、職員が7カ所の戦跡を訪れた。博物館内で収蔵する写真が古かったため、実際に現場に向かい、道中が安全かどうか念入りに確認した。

 ウェブサイトはすっきりと見やすいデザインにこだわった。町内開催の企画展と違い、県外の人も閲覧できる。沖縄戦について初めて知る人のために、戦争の大まかな流れも解説する。宮里昌典館長は「戦争の愚かさを風化させず、後世に伝えることが大切だ」と語った。
 (喜屋武研伍)

慰霊の日ウェブ企画展「戦世とくらし」の制作にあたる本部町立博物館の田之岡綾花学芸員(左)、宮里昌典館長=5月27日、本部町立博物館前
慰霊の日ウェブ企画展「戦世とくらし」のホームページ画面