<県議選私の訴え>宜野湾市区 普天間移設の解決手法で二分 糸満市区 農水産業支援に注目 豊見城市区 教育、子育て環境を重視


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 6月7日投開票の県議選に向け、各立候補者は県全体の問題だけでなく、地域別の課題についても政策を訴えている。宜野湾市区、豊見城市区、糸満市区の課題を探った。 (’20県議選取材班)

<宜野湾市区>普天間移設先、意見二分 跡地利用、事故対応も

 米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市は同飛行場の名護市辺野古移設への賛否が大きな争点だ。政府は2013年に「5年以内の普天間の運用停止」を約束したが、辺野古移設に反対する県政との間で法廷闘争も続き、実現しなかった。日米合意で22年度とされていた普天間の返還時期は早くて30年代以降に持ち越されることが昨年12月に明らかにされている。立候補者には騒音被害を日常的に受け続ける市民の声を県議会の場で、どう代弁し具体的な政策につなげるのかが問われる。

 普天間移設問題の賛否を巡り、同市区で立候補した4人は、早期の危険性除去が必要だとの立場で一致するが、解決手法で意見は真っ二つに分かれる。県政与党系の2候補は辺野古移設に反対し、普天間の「即時無条件閉鎖・撤去」を求める。野党系2候補は早期の普天間返還のためには「移設はやむを得ない」との考え。

 今年4月には発がん性が指摘される有機フッ素化合物の一種PFOS(ピーフォス)を含む泡消火剤が普天間飛行場から流出し、周辺地域に飛散することもあった。事件・事故への対応とともに、造成が進む旧西普天間住宅地区や普天間返還後の街づくりなど、市の未来を描く跡地利用の政策提示が求められる。

<糸満市区>農水産業支援に注目

 漁師町として知られる糸満市だが、新型コロナウイルスの影響は糸満の漁業にも深刻なダメージを与えている。糸満漁業協同組合によると、現在、魚のセリ値は従来の3分の1程度まで落ち込み、多くの漁業者が休業を余儀なくされているという。糸満は農業の町でもある。2015年の国勢調査によると、糸満市は農業に従事する人の数が宮古島市に次ぎ県内で2番目に多い。だが農業も新型コロナの影響で、野菜や花き類の価格低下が続いており、畜産や果樹類にも影響が出ている。今県議選に糸満市区から出馬する3人の候補はそろって新型コロナ対策の充実と農業や水産業の支援を主な政策としてアピールしており、第1次産業への政策に注目が集まる。

 人口減少対策も市の重要な課題だ。市西崎地区では1980年代に埋め立てが進み多くの企業が進出した。市全体では人口は微増傾向だが、農業地域などでの人口減少が問題化している。若年者が定住できる雇用環境の整備が求められている。

 糸満市では市長選も県議選と同じ日に投開票される。真栄里地区の整備構想、子育て支援策などが主な争点となっている。

<豊見城市区>教育・子育てを重視

 県都・那覇市に隣接する豊見城市は住民の平均年齢が約40歳で、県内の市町村と比べても若い街とされる。市の人口は毎年右肩上がりで増え、市の統計によると、2008年の人口は約5万6千人だったが17年には約6万4千人となり、9年間で約8千人増えた。子育てや働き盛りの世代が多いため教育や子育て環境の整備に関心が集まる。

 県子育て支援課の取りまとめによると、市内で認可保育園への入所を希望しても入れない「待機児童数」は昨年10月1日現在、156人で前年よりも19人増えた。全県的に認可保育園整備が進められているが、幼保無償化などで潜在的な需要の掘り起こしもあり、施策展開が求められている。立候補した3氏はいずれも重視したい政策に「教育・子育て」を掲げており、訴えが注目される。

 市の課題の一つとなるのが公共交通網の整備となる。市は民間バス会社と連携して市内一周線を運行しているものの、市内を走る民間の路線バスが地域によって偏っている。

 18年に市がまとめた調査ではバス停から300メートル圏外の「公共交通不便地域」に約9千人が居住しているとされた。住みよい街づくりに向けた施策展開が求められる。

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