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週7日バイト漬け…困窮の高校生が「疲れたと言わない」理由 沖縄県調査から


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 沖縄県内の高校2年生とその保護者の生活実態を報告した2019年度沖縄子ども調査では、3年前の初回調査と変わらず、親子の厳しい経済状況が明らかになった。等価可処分所得122万円以下の困窮世帯の生徒の5割が経験していたアルバイトの調査結果では、平日に加えて土日の両日も働く生徒が半数に上った。バイトをせず塾や部活に行く生徒がいる一方、休みもなく学用品や昼食の費用のために働きながら高校生活を送る生徒が少なくないことが浮き彫りになった。

 沖縄本島南部の高校に通う3年生の女子生徒(17)は5月下旬、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛要請の解除を受けて、自粛していたアルバイトを再開させた。バイト先は居酒屋とコールセンターの2カ所。週3日ずつそれぞれで働き、日曜日は両方を掛け持ちする。丸1日休める日はほとんどない。

 懸命に働く一番の目的は進学費用だ。家計を担う母親は「自分が出すからためなくていい」と言ってくれるが、母だけでは厳しいと感じている。幼いきょうだいもいる。「自分のことは自分で」と甘えるつもりはない。

 学校が終わるとバイト先にバスで移動し、高校生が許される午後10時ごろまで働く。帰宅は深夜で土日もバイトがあるため勉強は移動のバスや車の中だ。「疲れたと言うともっと疲れる気がするから、言わない」と明るく笑う。朝の起床時は「今日も頑張るぞ!」と活を入れて奮い立たせるのだという。

 部活は入ったことがない。中学の時はきょうだいを幼稚園に迎えに行くため時間が合わなかった。「やっておけばよかったかな」と思うこともあるが、フルタイムで働く母親は仕事を抜けられない。「母に『助かる』と言ってもらえるとうれしいし、頑張っている親に比べたら自分なんてまだまだ」と気丈に振る舞う。

 新型コロナによる休業で貯金計画がずれた。「めっちゃ焦る」と今後、バイトのシフトを増やすつもりだ。

 学校とバイトの合間に友達とタピオカドリンクを飲みに行くなどの楽しい時間もあったが、今後はそれも難しくなる。それでも「バイトが増えるのはきついけど、遊ぶ時間がなくなって出費を抑えられるから一石二鳥」と明るく話した。
 (黒田華)


「毎日働く」クラスに約7人
 

 調査では困窮、非困窮を合わせて全体の34・8%の生徒がアルバイト経験があると答えた。回答した1327人に働く日数や時間を聞くと、学校がある平日に働く日数は「3日」が最も多く28・6%だったが、「4日」とした生徒も13・8%、「5日」も4・7%いた。平均すると40人学級のうち7人程度が放課後ほぼ毎日働いている計算だ。特に、困窮世帯の生徒は平日に働く日数が非困窮に比べて多い。

 平日に働く時間については4時間が最多の42・1%だが、「7時間以上」も1・2%いた。午後4~5時ごろの学校終了後からのバイト勤務だとすれば、午後9時以降に大抵は勤務を終了することになり、放課後の部活動や学習時間の確保が困難であることが分かる。

 バイトをしている生徒の86・2%が土日も働いており、うち「2日とも」とする生徒は48・2%に上った。土日の勤務時間で一番多かったのは「7時間以上」で25・7%。「6時間」の18・7%を合わせると半数近くがフルタイム並みに働いていた。1カ月のバイト収入は「2万~4万円」「4万~6万円」が合わせて6割を占めた。