辺野古工事「政府は寄り添う気ない」「税金はコロナに」再開強行に抗議


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 【辺野古問題取材班】米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設工事が12日、約2カ月ぶりに再開した。基地建設に反対する市民らは辺野古の海上や米軍キャンプ・シュワブのゲート前で抗議の声を上げた。7日投開票の県議選では、辺野古移設に反対する当選者が過半数を占めた。基地建設を拒否する民意が改めて示される中、工事を強行する政府の姿勢に市民らは強く憤った。

工事再開に抗議のシュプレヒコールをあげる新基地建設反対の市民ら=12日午前9時20分ごろ、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前

 海上には市民らが抗議船2隻とカヌー7艇で繰り出し、基地建設反対を訴えるプラカードを手に抗議活動を展開した。市民らは「工事をやめろ」「海を壊すな」と声を張り上げたが、抗議を無視するかのように埋め立て区域に土砂が投入された。「抗議活動はずっと続いている。長いよ」。ヘリ基地反対協議会の仲本興真事務局長は、工事の様子を見つめてつぶやいた。

 米軍キャンプ・シュワブのゲート前には、市民ら数十人が駆け付けた。基地建設に使う石材などを積んだ車両が到着すると、機動隊がゲート前で抗議する市民らに移動を促した。新型コロナウイルス感染予防のため機動隊との接触を避け、呼び掛けに応じて自ら移動する人もいた。

 一方で、機動隊に椅子ごと持ち上げられて強制排除される人の姿もあった。資材を積んだ工事車両は、計111台がシュワブ内に入った。

 那覇市の下門恵子さん(75)は「コロナも心配だが、基地建設に断固反対の意思を示さないといけない」と思い、ゲート前に足を運んだ。下門さんは「基地建設で税金を無駄遣いせず、コロナウイルスの影響で困窮する人のために使うべきだ」と訴えた。

 座り込みに参加した那覇市の上間芳子さん(74)は、県議選で玉城デニー県政を支える与党が多数だったことを指摘。「選挙の結果にかかわらず工事を進めている。他の地域ではありえない」と怒りをあらわにした。


「コロナもジュゴンも対策ないのに」

 名護市辺野古の新基地建設が12日に再開したことを受け、抗議市民からは「(市民の)命をどう考えているのか」などと政府の対応を疑問視する声が相次いだ。

 工事再開を受け、沖縄平和運動センターの山城博治議長は「沖縄に寄り添う気持ちが政府にあれば基地建設を強行はしないし、県議選の結果を受けて『辺野古移設への理解が進んだ』とする官房長官の発言もない」と政府を批判した。その上で「(2014年7月の)ゲート前の座り込み開始から間もなく6年。参加者から感染者を出さないよう防止策を取りながら、今後も断固として声を上げていく」と力を込めた。

 県統一連の瀬長和男事務局長は「コロナから命を守る態勢が整わない中、市民が抗議に駆け付けることが分かった上で国は工事を再開した。命をどう考えているのか」と憤った。

 2月、3月に埋め立て予定地周辺で、ジュゴンとみられる鳴き声が確認されたことを受け、本部町島ぐるみ会議の高垣喜三さんは「コロナもジュゴンもまだしっかりとした対策が示されていない中、工事を強行するのはあり得ない」と強く訴えた。