減りゆく沖縄戦体験者の「生の声」どう継承するか 平和教育の重要性高まる 本紙・OTV・JX通信県民意識調査


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<解説> 戦後75年の「慰霊の日」を前に琉球新報社と沖縄テレビ放送、JX通信社が実施した県民意識調査では、首里城地下にある日本軍第32軍司令部壕を「保存、公開すべきだ」との回答が74・16%に上った。県は崩落の懸念から公開を困難視しているが、県民の大多数が重要な戦跡の保存と公開を望んだ。戦争体験者の高齢化で「生の声」を聞く機会が失われつつある中、戦跡を通じた戦争の記憶継承に課題が突き付けられた。

 戦争体験をどのように継承するかについて「もっと体験を語り継ぐべきだ」との回答が63・42%と最多だったが、2015年の前回調査より12ポイント減った。一方で前回はわずか0・4%だった「分からない」は7・16%に増えた。戦争体験者の高齢化が進む中、沖縄戦の記憶をどう継承できるのか県民の戸惑いもうかがえる。戦争体験を継承するための仕組みづくりも今後は必要になる。

 若い世代にも沖縄戦の記憶が風化することへの危機感がうかがえる。「戦後処理の課題」を問う質問では30代の72・41%が「平和教育・史実の継承」と答え、全世代で最も高かった。

 戦争体験の継承に向けて「学校現場での取り組み」や「行政による平和関連事業の充実」を望む人は、全体の6割を超えた。減りゆく体験者に代わり、学校や行政に平和教育の担い手を期待する人は多く、平和行政を進めることの重要性は高まっている。

 沖縄戦の教訓が「軍国主義や徴兵制の恐ろしさ」と回答した割合は、70代以上で28・16%となったが、年代が低くなるほど減り、20代は5・56%にとどまった。住民を戦争に巻き込んだ国家権力の姿を目にした世代は、国が再び暴走することへの警戒感が強く出た。
 (島袋良太)