米軍コロナ61人「観光回復に冷水」「米軍に情報開示を」経済界に驚きと怒り


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 在沖米軍基地内で61人の新型コロナウイルス感染者が確認され、県内の経済関係者にも衝撃が走った。10日から県民の県内旅行を促進する県の「おきなわ彩発見キャンペーン」第2弾が始まり、22日には政府の観光割引「Go To キャンペーン」の開始を控える。米軍基地での多数感染は沖縄観光への負のイメージを招きかねず、県経済の回復へ向けた各業界の取り組みにも水を差す格好となった。経済関係者から「驚きと怒りだ。米軍は一体どういう対策をしていたのか」と憤る声も上がる。

 県ホテル協会の平良朝敬会長は「情報がないと、対策を打ちようがない」として米軍の情報公開の対応を疑問視した。その上で、玉城デニー知事に対し「『観光に来るな』とは言うべきではない。県が米側から情報を取って公開することがまず必要だ。手腕が問われている」と指摘した。

 JTB沖縄の杉本健次社長も「情報開示が一番大事だ」と強調する。基地内の感染状況や経路などの情報を公開しなければ、観光客にも不安が広がり旅行控えが出てくると想定する。杉本社長は「風評被害が起きてくると、これまでやってきたことが全て水の泡になる。県は米軍に対して毅然(きぜん)とした態度で情報開示を求めてほしい」と話した。

 県商工会連合会の米須義明会長は「これだけ一気に広がるのは管理がされていない証拠だ。(感染対策などの)状況が把握できず、不安だけがあおられる」と語り、米軍の感染症対策を疑問視する。

 米海兵隊は北谷町内のホテルを借り上げ、人事異動者の隔離施設として使用している。同町商工会長も務める米須氏は「商業施設や観光施設への風評被害も懸念される中、今回のクラスター発生でさらに影響を受ける。基地をロックダウン(封鎖)すべきだという意見もあるが、経済的に影響を受ける人もいるので難しい。検査を徹底してこれ以上拡散させないようにしてほしい」と語った。

 県飲食業生活衛生同業組合によると、県内の新規感染者が約2カ月間ゼロが続き、地元客を相手とした飲食店の売り上げは平時の7~8割まで戻り始めていた。だが、今月9日に県内で再び感染者が発覚したことで売り上げは10~20%減少しているという。

 鈴木洋一理事長は「基地内の発生とはいえ、観光客からすると沖縄での発生に変わりない。回復に向け盛り上がってきた飲食業に水を差す」と懸念を示した。

 県ハイヤー・タクシー協会の東江一成会長は「あともう一踏ん張りというところなのに、頭が痛い」とため息をつく。基地関係者をタクシーに乗せることも多く、運転手にも不安が広がると懸念する。

 7日に普天間基地で感染者が出たことを受け、会員タクシー業者に感染対策をより強化するように通達を出していた。東江会長は「米軍は感染者をしっかりと隔離し、対策してもらわないと困る」と話した。