[日曜の風・香山リカ氏]辺野古軟弱地盤 「新基地ノー」声上げて


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 東京は地震が多い。9日早朝にも茨城県を震源とする地震が起きて、東京は震度2だった。

 そんな土地に住んでいる私にとって、先日の報道は衝撃的だった。専門家の調査団は、辺野古護岸の軟弱地盤は、震度1の地震でも崩壊する可能性が高い、という解析結果をまとめたのだ。地盤の改良工事をしても状況は変わらないという。施工中も護岸崩壊の危険性はあるとのことで、工事にあたる人たちの安全も懸念される。

 そんなところを埋め立てて米軍の飛行場を作ろう、ということ自体まったくのナンセンスだ。「作ればいいというものではない」とつぶやくと、知人が「国としては、とにかくメンツのために作ればいいと思ってるんでしょう」と言った。日本の防衛のためでも日米関係のためでもなく、とにかく「作りました」という大義名分のためにむちゃな工事を進めている、という意味なのだろう。本末転倒にもほどがある。

 新型コロナ対策でも、この「やればいい」というのが優先されて、目的を見失っているように見える。関東を中心に感染者が激増しているのに、総理も大臣も「3月のようなひっ迫した状況ではない。旅行のキャンペーンやイベントの制限解除を進める」と繰り返す。

 しかし、高齢の重症者こそ少ないが、都内の検査センターや大学病院の外来はすでにひっ迫しつつある。検査を院外のテントで行う機関も多く、防護衣を着ている医者や看護師の熱中症の心配もある。経済の再開をさせることはもちろん重要だが、感染が全国に拡大しては元も子もない。「なんのための経済か」という本来の目的が見失われているのだ。

 私もまた医療機関から、「事態を楽観視せずに早く対策を」と声を上げていくつもりだ。沖縄のみなさんも「もう散々言ってきたのに」とイヤ気がさしているかもしれないが、「危険な地盤への米軍飛行場建設はノー」といっそう大きな声を上げてほしい。その上、基地内でのコロナ大規模感染が確認された。しかも米軍は詳細な情報を公開しない。もう許せない。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)