育鵬社の中学公民教科書、石垣と与那国で採択 4回目 保守的記述への意見なし


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育鵬社版公民教科書の採択を決める石垣市教育委員会=11日、市教委

 【石垣】2021年度から使用する中学校教科書について、石垣市と与那国町の教育委員会は11日に臨時会を開き、保守色が強いと指摘される育鵬社版の公民など10教科16種目の教科書を、教科用図書八重山採択地区協議会(会長・石垣安志石垣市教育長)の答申通り採択した。両教委の育鵬社採択は4回目。 

 市教委臨時会で、採択地区協議会事務局(市教委学校教育課)は公民の育鵬社選定について「社会的事象を自分事として捉える教材をバランスよく配置している」「領土問題や憲法、沖縄の基地問題がしっかりと扱われている」などと説明した。

 教育委員は「保守的な記述が多く、反発の声も多い」として協議会での議論について質問した。事務局は、協議会委員の7人中4人が育鵬社版を推薦したとし、再協議の結果、6対1の賛成多数で同社版の選定が決まったとした。保守的な記述に関する意見はなかったという。

 教科書選定・採択を巡り「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」は、教育委員が過半数を占める協議会構成の改善や会議の公表などを求めて請願を提出していたが、市教委はこれを不採択とした。石垣教育長は「協議会は一定の政治的中立性があり、十分に審議して選定した。静謐(せいひつ)な環境での審議が必要だとの委員の総意で非公開にしている」と強調した。

 市教委の臨時会を傍聴した住民の会の江川三津恵共同代表(75)は「全国的に育鵬社版への反発の声があり、採択を取りやめる動きもある。なぜ反発の声があるかを深く理解してほしかった」と話した。