新型コロナウイルスの対策を巡って、沖縄県は難しい判断に迫られている。県独自の緊急事態宣言が15日に期限切れになることを見据え、13日に対策本部を開催する。警戒レベルを現在の第3段階から第4段階へ引き上げるか否か、同宣言の延長の可否などが焦点だ。感染拡大で医療提供体制は「最悪の状況」に近づく中、観光産業は繁忙期の夏場に発せられた緊急事態宣言により甚大な打撃を受けているさなかだ。新型コロナ対策は疫学的な対策と社会経済活動のはざまで、これまでもぎりぎりの政策決定が行われてきた。玉城デニー知事はさまざま状況を加味し慎重に判断する。
人口10万人当たりの直近1週間の新規感染者は41・52人で、12日連続で全国最多を記録した。現在、県の警戒レベルの引き上げなどを判断する七つの指標のうち「重症者用病床占有率」と「入院1週間以内の重症化率」を除く五つの指標が第4段階に達している。玉城知事は「医療提供体制は(最も深刻な)第4段階にあると受け止めている」と述べた。
県は緊急事態宣言後も感染者数が増加し続けていることを憂慮し、警戒レベルを引き上げることも見据えて観光産業関係者へ意見聴取を始めた。9日には、富川盛武副知事が旅行社や観光施設、ホテルなどの関係者らも交えて緊急会議を開催した。
大打撃を受ける観光関係者は、県が警戒レベルを引き上げて県外からの渡航自粛要請に踏み切ることを危ぶんでいる。会合では、重症者数などを重視して冷静な判断や情報発信をするべきだなどの声が上がり、警戒レベルの引き上げに反対の声が相次いだ。
出席した観光関係者は「レベル4に引き上げると渡航自粛を要請せざるを得なくなる。既に旅行はほとんどキャンセルになっている中でさらに苦しくなる。(誘客の目玉となる)沖縄美ら海水族館が閉まる基準なども見直していくべきではないか」と切迫した様子で話した。
感染症予防は人の移動を制限することが基本だ。だが県はこれまで県経済への影響から、県内事業者に感染予防策の徹底を求めつつ、政府の観光支援事業「Go To トラベル」を容認して県外観光客を受け入れてきた。県財政では、渡航自粛要請をしても観光客や事業者らに満足な補償を実施できないという懐事情も課題だ。
県幹部の一人は「警戒レベルの引き上げありきではなく、状況を見ながら(13日に)判断する」と述べ、慎重な姿勢を示した。
(梅田正覚、中村優希)