基地機能強化の懸念も 那覇軍港北側案合意 形状や機能、今後協議


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努
那覇軍港=2020年8月20日

 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設を巡って県と那覇、浦添の両市は、代替施設を浦添ふ頭地区北側に配置することで事実上、合意した。議論が行き詰まった最大の要因だった代替施設の配置について意見の相違が解消されたことで、議論が加速する見通しだ。3者は経済振興の観点から移設を進める考えだが、課題は山積している。名護市辺野古の新基地建設と同じ県内での「たらい回し」との批判もある。紆余曲折(うよきょくせつ)の中で移設問題を取り巻く環境も一変した。改めて軍港移設問題を振り返る。

 那覇軍港の浦添市移設で、基地機能が強化される恐れが拭えない。現時点では民港の北側に軍港の代替施設を造るという大まかな配置が決まっただけで、形状や機能は今後の協議に委ねられる。基地機能が現在の範囲内にとどまる確約はない。移設予定地の水深は現在の施設よりも深く、入港できる船の規模が大きくなる可能性は高い。

 現在の軍港の水深は約10メートルにとどまる。移設先となっている浦添ふ頭地区沖合は水深15~20メートルとされる。大型船が多く入港する那覇港の新港ふ頭地区と同等で、移設後の協議によっては大型の米軍船が入港できるようになる。

 県や浦添市は現軍港の機能や運用を超えないことを日本政府に確認し、移設計画を認めてきた。だが、形状や機能は今後の協議によって決まるため、機能維持にとどまるかは不透明だ。

 同じ県内移設条件付きで反発の大きい普天間飛行場の返還では、名護市辺野古移設に伴う基地建設を巡って事後的に基地機能強化の実態が判明してきた経緯がある。現在の普天間飛行場にない機能が付くことが明らかになるにつれ、新基地建設と呼ばれるようになった。