幻となった自治体合併や米軍抗議、16年の激動記録「嘉手納町史」が発刊 復帰から発展へ戦後資料の「完結版」


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「嘉手納町史 資料編8」(手前)と歴代の町史

 【嘉手納】嘉手納町教育委員会は、沖縄が日本復帰した1972年から88年の昭和末期までの町の変遷を追った「嘉手納町史 資料編8~戦後資料(下)」を発刊した。幻となった嘉手納村と読谷村の合併協議や、急速に進められた公共工事や町制の誕生、米軍への抗議行動の記録など、激動の16年間を統計や資料写真をふんだんに盛り込みながら振り返っている。

 本書は終戦から復帰までを網羅した「嘉手納町史 資料編7 戦後資料(上)」(2010年発刊)の続編で、戦後資料編の完結版。政治、経済、社会、教育、文化の5項目に分けて町の歩みを記録した。

新発刊の「嘉手納町史」をPRする比嘉秀勝教育長(右から2人目)や宮平友介さん(同3人目)ら町教育委員会の関係者=8月21日、嘉手納町役場

 編集に携わった町教育委員会民俗資料室の宮平友介さんによると、当初の構想は復帰後から2008年のロータリー再開発事業完了までを範囲としていた。ただ、編集委員の中からより資料性を高めるため、なるべく多くの統計や資料を掲載しようという声が上がり、戦後資料編は復興し発展していく昭和年代に照準を合わせた。平成以降は21世紀を見据えた新しい嘉手納町の発展として、9巻以降でまとめる方針だという。

 宮平さんが制作過程で興味深かったのは「米軍基地と町の関係性や、復帰当時は貧弱だった町財政が、急速に膨れあがり安定していく様子が見えたこと」だと振り返った。当時の広報誌やあらゆる記念誌を活用しただけでなく、町民からの聞き取りなども積極的に行ったといい「町民みんなで作り上げた一冊だ」と胸を張った。

 比嘉秀勝教育長は、原稿作成にも携わった元教育長の伊波勝雄さんの「歴史は人生の教師、歴史を動かすのは人間」だという言葉を引用し、「わが町の全てを町史から学ぶことができる。町の良さを知るためにも愛読してほしい」と呼び掛けた。

 全977ページで税込み千円。町文化財課と町役場3階の社会教育課で販売している。限定500冊。問い合わせは(電話)098(956)2213(町文化財課)。町民には第1巻を無料配布している。