「沖縄に鉄軌道」費用対効果は目安を大幅に下回る 前年度よりは微増 内閣府調査


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内閣府沖縄総合事務局=8日午後、那覇市おもろまちの那覇第2地方合同庁舎2号館

 【東京】内閣府は11日、2019年度に実施した沖縄での鉄軌道導入に関する調査結果を公表した。「高速AGT」と呼ばれる最新技術車両を導入しルート変更などでコスト縮減を図った結果、導入コストに対する経済効果を示す「費用便益比」(B/C)は0・71だったとした。前年度調査比で0・02改善したが、事業実施の目安となる1を引き続き大きく下回った。県の試算では1を上回っており、違いが浮き彫りになった。

 内閣府の調査は名護市~沖縄市~那覇市~糸満市を結ぶ。本年度新たに加味したのは(1)概算事業費の精査(2)北部のテーマパークなど最新の開発プロジェクトによる需要増(3)最新技術車両の導入(4)那覇~宜野湾間を国道58号経由とし、高架区間を増やす―の4項目。

 このうち概算事業費は地価公示価格の上昇や東京五輪に伴う建設資材価格の上昇を織り込んだ。その結果、前年度調査比410億円増の6680億円となった。

 開業後40年間の累積赤字額は同1210億円減の2080億円。宜野湾~那覇間で従来の国道330号の下にトンネルを掘るルートから、国道58号に沿う高架線に変更したことが効いた。高速AGTによる導入コスト削減や高架線に適用できる国土交通省の補助金を織り込んだ。

 一方、B/Cが1を超えた県調査との違いとして、想定観光客数の違い(国調査は県が2021年度目標とする1200万人に対し、県調査は1350~1400万人)、鉄軌道利用者の便益や、鉄軌道の開業に伴い混雑が緩和する自動車やトラック利用者の便益を巡る計算方法の違いを挙げた。整備区間も国(名護~糸満)と、県(名護~那覇)で異なる。

 内閣府は本年度も調査を続ける。需要に合わせ駅舎の大きさを見直したり、民間資金やノウハウの活用によるコスト縮減を探ったりする。一方、新型コロナウイルス感染症後の需要の変化も織り込む見込み。大手私鉄の四半期決算でも赤字となる会社がある中、厳しい数字となる可能性もある。