動員された朝鮮人の沖縄戦 沖本さんが冊子に 過酷作業や虐殺、証言交え紹介


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
「沖縄戦に動員された朝鮮人ー軍人・軍属を中心にして」の中身の一部

 沖縄戦に動員された朝鮮半島の人々について研究する沖本富貴子さん=八重瀬町=が、動員の実態をまとめた冊子「沖縄戦に動員された朝鮮人 ―軍人・軍属を中心にして」を発行した。沖本さんは「実態は今も不明な点が多いが、全体像を体系的にまとめているので、理解を深めてほしい」と話す。

 沖本さんは、日本軍の留守名簿や県内の市町村史、元学徒らの体験記などを読み込み、5年ほどかけて冊子を完成させた。多くの写真や証言、地図を用いて、時系列で紹介している。

沖本富貴子さんが発行した冊子「沖縄戦に動員された朝鮮人ー軍人・軍属を中心にして」

 冊子では初めに、日本の植民地下にあった朝鮮半島の人々が戦争に動員された歴史や、近代史研究者の竹内康人さんの研究を基に、南西諸島に動員された部隊名、動員数、死亡者数などを一覧表で掲載した。

 続いて、現地で日本軍が強引に徴用した約2800人の朝鮮人軍属が「特設水上勤務隊」(水勤隊)として沖縄に送られ、各地の港で過酷な荷役作業や陣地構築に当たったこと、慶良間諸島への米軍上陸後は日本軍に切り込みを強要されたり、虐殺されたりしたことを証言を交えて紹介した。

 この冊子で沖本さんは、一般的に使われる「朝鮮人軍夫」という表現について「多様な被害と犠牲になった朝鮮人の全体像を見失う」とも指摘。日本軍の史料から、日本軍が水勤隊の朝鮮人を「軍夫」としていたことを突き止めた上で「差別の意味が強く込められていた」と現在の使用にも疑問を呈す。

 冊子は1冊1200円。問い合わせは沖本さん(電話)090(3794)0524、または、発行所のアジェンダ・プロジェクト(京都市)FAX(電話)075(822)5035。