辺野古移設 対話の前提にずれ 双方主張止まり「会話続かず」 防衛相初来県<ニュース透視鏡>


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就任後初めて沖縄県庁を訪れ、玉城デニー知事と会談する岸信夫防衛相(左)=22日午後、那覇市

 岸信夫防衛相が21、22の両日、就任して初めて来県した。玉城デニー知事とは2度目の会談だ。7日に玉城知事が防衛省を訪れた際の初会談は約15分と時間が短く、来県した際の会談について玉城知事も「丁寧に説明できる時間」と期待を寄せ、岸防衛相も「実質的な意見交換としては初めて」と位置付けていた。だが結局、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設など基地問題を巡る議論は平行線だった。

■SACWO

 「県の提案を真摯(しんし)に受け止めてほしい」。玉城知事は、自身が施策に反映させるために設置した有識者会議・万国津梁(しんりょう)会議の提言書に言及し、米軍の戦略変更を踏まえた普天間飛行場問題の解決を迫った。過去の計画を再検証する点では就任当初から主張してきた、日米両政府に沖縄県を加えた話し合いの場「SACWO(サコワ)」の考え方にもつながる。

 だが、岸防衛相は「安全保障環境が厳しい中で日米同盟の抑止力、中核的要素である沖縄における海兵隊の重要性は変わらない」とかわした。県としては日米安全保障体制や米軍の運用を認めた上で、在沖米軍基地の分散が有効だと訴えて理解を進めたい考えだったが、岸防衛相には通じなかった。

 岸防衛相はサコワについても「すぐつくるとは考えていない」ときっぱり。手元の資料に視線を落としながら話す場面が多く、政府としての従来の見解を繰り返すばかりだった。

■「各論」入れず

 会談後の取材で相互理解が深まったかと問われた岸防衛相は、否定も肯定もせず「知事の問題意識を聞かせてもらった。私も私なりの考えを伝えられた」と答えた。

 実際、会談は双方の主張を述べ合うにとどまった。県幹部の一人は「これまでと変わらない。平行線だ」と語った。別の県幹部は「今は会話が続かない。互いの主張で終わっている。時間がなく各論ができなかった」と振り返った。

 防衛相への要請書について、謝花喜一郎副知事が全15項目の概要を説明するのに約10分間かかった。大臣への要請に当たって通例取ってきた形式ではあるが、自由に討議する時間が減ることから県庁内でも「反省だ」と捉える声が上がった。

 岸防衛相が会談後の取材で対話の必要性を繰り返したことを受け、県幹部の一部はこの点を評価した。一人は「対話という言葉を何度も使っていた。知事がずっと言ってきたことに耳を傾けてくれるようになったのか。これからに期待したい」と前向きだった。

 ただ、政府は辺野古移設方針を堅持する構えだ。普天間飛行場の運用停止期限を新たに設定することさえ、岸防衛相は「辺野古移設について地元の理解と協力が得られていることが大前提だ」と強調していた。県と政府の間で「対話」の前提がかみ合っていない。

(明真南斗)