「なし崩し的」基地外宿泊に波紋 宮崎でコロナ拡大に警戒感 


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
防衛省の中山泰秀副大臣(左から2人目)に要請書を手渡す河野俊嗣宮崎県知事(同3人目)ら=19日、防衛省

 【東京】航空自衛隊新田原基地(宮崎県)を拠点とした日米共同訓練が26日から始まるのを前に、参加する米軍嘉手納飛行場所属の米軍人200人が基地外のホテルに宿泊することが、地元宮崎で波紋を広げている。新型コロナウイルスの感染が再拡大する懸念が絶えない中、過去に基地内でクラスター(感染者集団)が発生し、宮崎県の累計感染者数を超える400人以上の感染者を出している在沖米軍への警戒感が背景にある。基地外の宿泊施設を米軍自ら契約し、地元への連絡が遅れるなど今年7月に北谷町で起きた事例との類似性も、反発を呼ぶ一因となっている。

 「納得のいかない思いもある」。訓練を前に先遣隊約50人が宮崎入りした19日、同県の河野俊嗣知事は急きょ上京し、対応した中山泰秀防衛省副大臣に強い不快感を示した。河野氏は12日にも上京し、大西宏幸防衛政務官に米軍人の基地内宿泊を求めたさなかで「なし崩し的」(宮崎県議)に基地外宿泊が始まった形だ。

 20日には宮崎県議会と宮崎市議会が基地内での宿泊を求める意見書を全会一致で可決し、防衛省に提出した。抵抗の動きは“オール宮崎”の様相だ。

 宮崎側が懸念しているのが、在沖米軍を介した新型コロナウイルスの持ち込みだ。防衛省は「密」を避けるため、基地内宿泊は難しいとする。米兵が宮崎入りする72時間前までにPCR検査を受け、陰性者のみが訓練に参加するとし、米軍の対策は「国内の新型コロナ感染症防止対策より厳しい」(中山副大臣)として基地外での宿泊に理解を求めている。

 だが、18日にも嘉手納基地の米軍関係者4人の感染が沖縄県に報告されるなど、米軍内の感染者が継続的に報告される中、「現実問題として沖縄の米軍関係者でそれだけ発生している具体的な数字がある」(20日の河野氏会見)と受け入れる“リスク”を訴えた。

 今年7月にも、在沖米海兵隊が北谷町内のホテルを借り上げて海外からの人事異動者を対象とした隔離施設として使用し、反発が広がった。海兵隊が海外から入る沖縄とは異なり、宮崎は国内移動だ。しかし米軍が自らホテルを契約し、契約前に地元へ説明していなかった点は一致している。米軍は地元の反発を呼ぶ行動を繰り返していることになる。

 沖縄国際大の前泊博盛教授(安全保障論)は「(沖縄では要望を)言っても聞いてもらえず、国も取り合ってくれない。『全国の沖縄化』が進んでいる」と話す。今回のことが前例となり「日本中でできるようになる可能性がある」と常態化を懸念した。日米地位協定上は問題とならないことが「悪用」されているとし日米合同委員会合意や条例などで「いかに歯止めを掛けるかを考えなければいけない」と指摘した。 (知念征尚)