沖縄で広がるワーケーション事業 「アフターコロナ」見据え、一大拠点の可能性


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オンラインでの取材に答える「KabuK Style」の大瀬良亮社長

 新型コロナウイルスの感染が再拡大し、沖縄の観光業が深刻な打撃を受けている。その一方で、コロナ禍で広がった「テレワーク」や働きながら休暇をとる「ワーケーション」など、新たな生活様式を踏まえた新規事業を沖縄で展開する企業が出てきている。沖縄振興策の一環として、内閣府が2020年度から実施している支援事業を利用する県内企業も相次ぐ。逆境の中でも「アフターコロナ」を見据え、新たな「沖縄観光」の在り方を模索する動きが広がりつつある。

 「沖縄はこれから単なる観光地のみならず、ワーケーションの一大拠点になる可能性を秘めている」

 こう力を込めるのは、定額制の宿泊施設斡旋(あっせん)サービス「HafH(ハフ)」の運営を手掛ける、KabuK Style(本社・長崎市)の大瀬良亮社長(37)だ。

 同社は「全世界に住むことのできるプラットフォーム」をコンセプトに、世界29の国と地域、297都市のホテル、旅館などの宿泊施設と提携。月額3千円~5万3300円で、提携先の宿泊施設に最長1カ月まで“泊まり放題”というサービスを展開している。

 沖縄でも本島や石垣、宮古島などに17拠点を確保しており、海外拠点の中心である台湾と共に、事業計画の中での「最重要拠点」に沖縄を位置付けている。

 2019年4月にサービスを開始。始業1年目でコロナ禍に見舞われたが、登録者数の伸び率、宿泊利用率ともに堅調だという。

 多くの観光業者が打撃を受ける中で業績を維持できた背景には、コロナ禍でのテレワーク推進の動きがある。サービス開始直後は、時間の融通が利きやすいフリーランスの利用者が大半だったが、コロナの感染が広がってからは、それまで3割程度にとどまっていた会社員の登録者が4割以上に増えたという。

 大瀬良氏は「時間と場所を自由に選択できるフレキシブルな働き方が広がったと感じる」と指摘する。

 県内の観光施設でも、テレワークやワーケーションの広がりに対応する動きが出ている。

 内閣府が20年度に約3億円を計上した「沖縄テレワーク推進事業」で、施設の整備・活用事業に41件の補助金が交付されてきた。

 カヌチャべイリゾート(同・名護市)も交付を受けた企業の一つで、従来のスパ施設を、テレワークに活用できる「コワーキングスペース」に改築するなどの取り組みを実施したという。

 大瀬良氏は「コロナでは既存の観光産業の課題が浮き彫りになった」とした上で、「沖縄の産業界に、旧来型のビジネスモデルに依存しない新風を吹き込んでいきたい」と意欲を燃やしている。