巨大地震、沖縄にも…過去に大津波、「震度1以上」実は13位


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 東日本大震災の発生から3月11日で10年を迎える。地震が多い日本のうち、沖縄は地震が少ないというイメージを抱く県民が多いかもしれないが、2020年における都道府県別の震度1以上の地震回数は全国13位に位置する。「地震大国」において多い方だ。過去の被害や今後の予想などから、沖縄の地震について紹介する。

制作・仲本文子(デザイングループ)
仲村良太(社会部)

 

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「明和の大津波」死者1万2000人

 沖縄では、南西諸島の太平洋側に位置する琉球海溝のほか、沖縄トラフ、活断層の動きなどで、地震が引き起こされている。過去にも関連した地震の発生、津波の被害が確認されている。

地震で世界遺産登録の勝連城跡が一部崩れ落ちた=2010年2月27日、うるま市石川
地震の影響で屋根瓦が落下した民家=2010年2月27日、うるま市石川

 過去の地震で最も大きな被害を及ぼしたとみられているのは、1771年4月24日に石垣島近海で発生したマグニチュード(M)7・4の地震だ。「明和の大津波」として知られ、大津波で八重山、宮古地域で死者約1万2千人、家屋流失約2千棟余の被害があったとされる。

 この津波の原因は、活断層の運動や海底地滑り、琉球海溝での海溝型地震などの説がある。石垣島の南東岸から東岸を襲った津波の最大遡上(そじょう)高は30メートルに達し、多良間島から宮古島南部海岸にかけては10メートルの津波が発生したとされる。

 津波に関しては沖縄から離れた場所で発生した「遠地地震」によるものが県内で観測されることがある。1960年5月のチリ地震津波では約1日かけて沖縄地方に到達し、羽地村(現・名護市)で3人が犠牲になったほか、日本国内でも大きな被害が確認された。

 1900年代は60年代にかけて、沖縄に被害を及ぼしたM6・2~8・0の地震が沖縄周辺を含めて複数回発生している。近年は小康状態にある。一方、2010年2月には那覇市の東約50キロ付近でM7・2の地震が発生し、糸満市で震度5弱を観測した。

震度6強以上の30年予測
県庁付近で15.8%

 全国各地の地点ごとに将来的な地震発生を予測する、国立研究開発法人防災科学技術研究所の「地震ハザードステーション(J―SHIS)」2019年版によると、今後30年間で震度6強以上の揺れに見舞われる確率について、沖縄地方で沿岸部を中心に広範囲で2番目に高い値(6~26%)と予測される。

 沖縄で一般的な地震は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込む時、巻き込まれたユーラシアプレートの端が戻ろうとして跳ね上がることで起きる。他にも宮古島やうるまなどで見られる活断層によるものも含め、J―SHISはあらゆる地震の発生を想定し、数値を算出している。

 各地点は250メートル四方に区分けされており、確率は「0~0・1%」「0・1~3%」「3~6%」「6~26%」「26~100%」の5段階。県内では沿岸部を中心に、「6~26%」の地点が多い。

 県庁周辺を含む「久茂地1丁目」付近では震度6強以上の確率が15・8%となった。震度6弱以上だと40・3%、震度5弱以上だと97・5%に達する。


識者の見方 本島南方沖にひずみも 中村衛氏(琉球大教授)

 沖縄地方周辺の過去の記録や将来予測について、琉球大理学部の中村衛教授(地震学)は「沖縄周辺でも大きな地震は起きる。近年、地震が少ないのは偶然だろう」との見方を示し、大きな地震が起きる可能性は「ゼロではない」と警鐘を鳴らした。

 中村教授によると、巨大地震や大津波を引き起こすプレートの境目である「固着域」が沖縄本島南方沖にある。2018年、琉球大学と名古屋大学大学院の研究グループが固着域について発表し、中村教授はその1人。長年、固着したプレートの境目が一気に破壊されると、東日本大震災のような海溝型地震が発生する。本島南方沖でも「長年のひずみがたまっている可能性がある」と指摘してきた。

 J―SHISの予測で、震度6強以上に見舞われる確率が沿岸部や本島南部の地点で高くなっている。埋立地や平地では、揺れが増幅しやすい軟弱な地盤が広がっているためだとして「どうしても人が多く住む場所は揺れやすい」と指摘した。