車いすで無人駅利用、なぜ中傷 伊是名さんブログに「わがまま」


車いすで無人駅利用、なぜ中傷 伊是名さんブログに「わがまま」
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 車いすで生活するコラムニストの伊是名夏子さん(38)=川崎市在住=がJRの無人駅を利用しようとした際、駅員に「ご案内できません」と言われ、旅行を断念しそうになる事態があった。全国で駅の無人化が進む一方で、バリアフリー化は遅れている。伊是名さんは介助を求めて交渉した経緯をブログに書き、改善を訴えたが、「わがまま」などと中傷が相次いだ。沖縄大学の島村聡教授(社会福祉)は「障害者差別解消法はできたが、設備の不備や偏見など社会的障壁を取り除くシステムができていない」と指摘する。

 伊是名さんは4月1日、子どもたちと神奈川県のJR小田原駅から静岡県の熱海駅を通り、同県の来(きの)宮(みや)駅に向かおうとした。電車発車の30分前に小田原駅に着き、駅員に行き先を伝えると、15分後に来るよう案内され、改めて窓口へ行くと「来宮駅は階段しかないのでご案内できません」と言われた。

 無人駅の来宮駅で介助が必要な場合は、管轄駅である熱海駅の駅員が乗車を手伝う。伊是名さんは事前に来宮駅を調べたが、無人駅であることや事前連絡が望ましいことは分からなかったという。伊是名さんは駅員を集めて車いすを運んでもらえないかと合理的配慮を求めたが、駅員は「対応していません」と答え、交渉は約1時間続いた。最終的に熱海駅から駅員4人が来宮駅まで赴き、車いすを運んだ。

 車いす利用者が電車に乗るという想定がなされていないと感じた伊是名さんは、駅員と交渉した経緯を発信し「誰もが安心して使える公共交通機関に」と訴えた。これに対し「事前連絡をしていないのが悪い」「感謝の言葉がない」などのコメントが寄せられた。

 2016年に施行された障害者差別解消法は、健常者には求めない場所や時間の制限などを、正当な理由なく障がい者に要求することを禁止している。島村教授は「当事者が主張するのは重要だ。周りも理解し、誰一人取り残さず、支え合う社会を目指していく必要がある」と強調する。

 伊是名さんは、人件費の削減などで駅の無人化が進む中、介助を必要とする人が不便を強いられることを懸念する。「私の発信に対する批判を見て、電車に乗るのがわがままなのかと不安に感じた障がい者もいて、申し訳ない」とした。 その上で、今回の出来事を可視化し、さまざまな障壁を取り除くために調整や変更を行う合理的配慮を広めるために「“わきまえない障がい者”として声を上げて社会を変えていきたい」と話した。

 JR東日本広報部は小田原駅職員の説明不足を認め「『介助はできるが、時間をいただけますか』と伝えるべきだった」と話した。介助の必要な人をスムーズに案内するために、利用者には事前連絡への協力を求めた。 

(関口琴乃)

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