沖縄県「不承認」へ審査 政府は工事止めず 辺野古の設計変更申請から1年 


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府が軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更を県に申請して21日で1年となった。新基地建設に反対する玉城デニー知事は申請を不承認とする構えで、現在も各部にわたり内容に問題点がないか慎重に審査している。一方、「辺野古が唯一の解決策」との姿勢を固持する政府は申請結果を待たずに、変更を前提にした地盤改良の実施設計を発注するなど工事を進めている。この1年を振り返る。

 政府が設計変更を申請したのは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、県が独自に緊急事態を宣言した翌日だった。事前連絡がないまま、沖縄防衛局の職員4人が名護市の北部土木事務所に約2200ページの書類を運び込んだ。

 申請書類の主な内容は、地盤を固めるため砂ぐいを打ち込む工事を追加し、埋め立てを進めるため護岸配置などの工程変更を求めるものだ。県の承認から埋め立て工事を経て、米軍の使用開始までに12年かかると見込み、総経費9300億円、うち地盤改良の費用は約1千億円と見積もった。

 7月には軟弱地盤問題と並行し、大浦湾のサンゴ類の移植許可を巡り、県が国を相手に提訴した。

 9月に公有水面埋立法に基づき県が申請書の告示・縦覧を行うと、県内外から多数の意見が寄せられた。県によると意見書は1万7839件に上り、全て工事に否定的な意見だった。

 12月には、申請書に軟弱地盤の詳細なデータがないなど説明が不十分な部分があるとして、県は防衛局に16項目242問の質問を文書で送付。防衛局は、改めて軟弱地盤が約90メートルに達する地点の調査について「必要はない」と回答した。

 県は21年2月にも、陸上自衛隊と米海兵隊が、辺野古の米軍キャンプ・シュワブを共同使用することについて協議や合意があったかなど13項目96件の質問を投げた。窓口となる県海岸防災課の担当者は「防衛局からの回答内容を精査中で、必要があれば再度質問を投げる」との意向を示している。

 政府は申請書作成に当たり、有識者が助言する「技術検討会」を設置。自らの地盤改良計画に専門家のお墨付きを得たとの立場だが、その技術検討会は誤ったデータを含む資料に基づき開催されたものだったことも分かっている。

 膨れあがる工費や延びる工期、難工事を理由に、米連邦議会下院軍事委員会即応力小委員会や米シンクタンク戦略国際問題研究所など米本国の有力機関も新基地の完成を困難視する中、政府は工事の速度を緩めない。

 玉城県政が申請を承認しない場合、政府は法的措置に踏み切るとみられ、県と政府の攻防激化は避けられない見通しだ。

(当銘千絵)


「県、適切対応を」防衛相、早期判断に期待

 【東京】岸信夫防衛相は20日の閣議後会見で、名護市辺野古の新基地建設に関連し、軟弱地盤の改良に必要となる設計変更申請を県に提出してから、21日で1年がたつことを踏まえ「県において適切にご対応いただければと考えている」と述べるにとどめた。

 岸氏は県の審査手続きについては「コメントを差し控える」とした。申請書の内容は、沖縄防衛局が設置した技術検討会や環境監視等委員会で有識者の助言を得て「十分な検討を行ったものだ」と改めて強調。県が審査結果を早期に示すことに期待をにじませた。