半導体内粒子の撮影にOISTが世界初成功 「1世紀にわたって目指してきた」


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄科学技術大学院大学

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、半導体の中で瞬間的に存在する粒子「励起子(れいきし)」内の電子の軌道を、世界で初めて撮影したと発表した。22日にオープンアクセスの科学誌「サイエンス・アドバンス」に掲載される。OISTは、撮影の成功について「約1世紀にわたって科学者たちが目指してきたこと」と意義を強調した。半導体は、スマートフォンや太陽電池などの材料に用いられる。

 励起子は、半導体が光子を吸収することにより、負の電荷を帯びた電子が低いエネルギーレベルから高いエネルギーレベルに飛び移ることで生成される。この時、正の電荷を帯びた穴「正孔」ができ、負の電荷を帯びた電子が正孔と引き合って周回する。

 励起子は非常にもろく、生成されてから数兆分の1秒程度で消滅するため、検出や測定が難しい。近年まで、消滅した時の光などしか確認できず、運動量などの性質は理論的にしか説明できなかった。

 OISTフェムト秒分光法ユニットの研究チームは、2020年12月に励起子内の電子の運動量を測定する技術を発表した。今回、その技術を用い、励起子内の正孔周辺の電子分布を示す画像を世界で初めて撮影した。

 同ユニットのジュリアン・マデオ博士は「粒子がより大きな複合粒子を形成する際の内部軌道を可視化できるようになれば、これまでにない方法で複合粒子を理解し、最終的には制御することが可能となるかもしれない」とコメントした。