「ツーブロック」なぜ校則違反? 美容師が見た新学期の「悲劇」


社会
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上地武さん(後列右)が経営する美容室CouCouのスタッフ。美容師は髪型も髪色も多彩=那覇市首里久場川町

 サイドの髪を短く刈り上げ、トップの髪をかぶせる髪型「ツーブロック」は、多くの学校で禁止されている。現代社会では一般化し、特異な髪型ではなくなった髪型が禁止されることで、どのような影響が出るのか。そもそも、禁止する理由は何か。読者からも疑問が寄せられた。ツーブロック禁止から、校則について考える。

<美容師が見た「悲劇」>

 琉球新報読者と記者をつなぐアプリ「LINE@」(ラインアット)には、校則に関する不満の声が多く届く。その中に、美容室で韓国人俳優イ・ジョンソクさんのような髪型をオーダーすると「校則で禁止されているツーブロックだからできない」と言われたという投稿があった。校則でツーブロックを禁じられることについて、美容師はどう感じているのか。髪型に関して生徒と話をする機会が多い美容師の上地武さん(51)に話を聞いた。

 上地さんによると、沖縄の人は毛髪量が多い比率が高いという。サイドを短く刈るツーブロックは、全体をすっきり見せる効果があり、沖縄の子に合った髪型とも言えそうだが…。

 「中学生が来て『校則は大丈夫』って言うからツーブロックに切ったんだけど、その後、『先生に注意されたから丸坊主にして』って言ってきた。最近、そういう子が何人かいたわけさ。すごく落ち込んでしまって。かわいそうだよ」

 上地さんは、新年度に男子中学生の身に起こった「悲劇」を教えてくれた。ツーブロックは髪の横を短く刈り込むため、「髪型を直せ」と言われたら、生徒は短い方に合わせて丸刈りかスポーツ刈りにするしかないという。丸刈りの強要は体罰に当たるというのが教育界の常識だが、この場合、教師は「丸刈りにせよ」と命じてはいない。「黒に近いグレー」の指導がなされている実態があるようだ。

 上地さんが怒りを覚えるのは、学校によって校則に差があることだという。「優等生が通う高校はツーブロックが認められているが、やんちゃな子が通う高校はだいたい禁止だ。成績が下の子だけに厳しくしているように見えて、俺は嫌」。さまざまな高校の生徒が通う美容師だからこそ、不平等な校則に気付く。「全県で統一はできないのか。簡単なことだと思うけどな」と提案する。

 上地さんによると、同じ学校でも、生徒指導の教師が替われば、運用も変わるという。「前の年は認められていたものが、次の年に禁止される。ぶれぶれだよね」

 中学校では、癖毛を矯正するストレートパーマも許可が必要だという。「癖毛は思春期の子にとって大きな悩み。申請すれば認めるのなら、最初から認めた方がいい」と指摘した。

 髪を切るときの制限は多いが、逆に伸ばしっ放しは指導されないという。「身だしなみを考えると、伸ばしっ放しの方が心配。おしゃれは自分をどう見せたいか、他人からどう見られたいのかというバランスで成り立っている。社会に出ても考えないといけないことだから、学生時代からおしゃれを考えることは大事だと思う」

 自分自身のことや、社会とのつながりを考える上でも、生徒が自分の髪型を主体的に考える機会があってもいいのではないだろうか。学校の外から、美容師が問い掛ける。

<県教委の考え>

 そもそも、なぜツーブロックは禁止されているのか。県立高校を管轄する県教育委員会県立学校教育課の屋宜宣安副参事は「定かではないが」と前置きしつつ、「事件事故に巻き込まれないようにするためだと思う」と説明した。その上で「個人的には、社会通念上、禁止されるものなのか議論すべき時だ」と校則改定に理解を示した。

 新型コロナウイルスによる一斉臨時休校があった昨年4月、県教委は休校中の取り組みとして「校則や指導基準が、時代や生徒の人権遵守に沿うものか」を検討するよう、各学校長に通知した。県教委は生徒の人権尊重の観点から、校則の見直しに前向きな姿勢だ。

 また、2022年度から成人年齢が18歳に引き下げられることを挙げ「高校生で成人を迎える時代になる。生徒が主体的に校則を決めることは、成人として自己決定する力を養う」と、校則改定の際に生徒が関わることの重要性を強調した。

 一方、小中学校を管轄する義務教育課の吉田順太主任指導主事は、ツーブロック禁止の理由を「高校入試があるから」と説明した。高校入試には面接試験があるため、身なりが奇抜だと合否に影響しかねないとの指摘だ。奇抜な身なりを理由にした、いじめなどの「大きな問題」が起こる前に、「小さな問題」の段階で不安要素を排除する意図もあるという。改定には慎重姿勢のようだ。

 中学校には、生徒の自由を尊重すべきだという意見と同じくらい、厳しく指導すべきだという意見も寄せられるという。校内の規律や高校とのつながり、地域社会の理解など、学校現場はさまざまな板挟みに直面しながら校則の在り方を考えている。

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