住民が基地の犠牲「戦前逆行の悪法」反戦地主・照屋さん 土地規制法成立


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「基地のために住民が犠牲になっている」と語る反戦地主会会長の照屋秀伝さん=13日、沖縄市内

 自衛隊や米軍基地など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する土地規制法16日未明、本会議で採決され可決、成立した。法律は基地周辺住民の監視につながる恐れが指摘されており、米軍や自衛隊の施設などがある自治体の住民らからは、批判や懸念の声が上がった。

 【沖縄】「戦争につながるものに加担してはいけない。幸せのために使いたい」―。反戦地主会会長の照屋秀伝さん(83)=沖縄市=は、祖父がハワイでの出稼ぎを経て手に入れ、その後父から譲り受けた土地がある。1972年、その土地の軍用地としての賃貸契約をきっぱり断った。「基地は住民を守るためにあるのか、いや違う。基地の安全を守るために住民が犠牲になっている」。そういう思いから、多くの反戦、反基地運動に参加してきた。自宅は東アジア最大級の米空軍基地・嘉手納基地から1キロ内に位置し、土地規制法案の規制範囲に含まれている。

 沖縄戦で母と末の弟を失った。38歳だった母、1歳にも満たなかった弟。「生きていたら」と2人の未来を何度も想像した。「二度と戦争は起こさせない。それにつながる基地もいらない」

 72年の施政権返還時には軍用地としての賃貸契約を拒否した。基地を維持しようとする日本政府の不当性に反対し、嘉手納基地の存在は憲法違反だとして訴訟も起こした。

 「基地の存在を否定する者をあぶり出して見せしめにしたいのか」。十分な国会審議も国民への説明もされないまま成立する見通しの法案に不信感が増す。規制の対象とする「機能阻害行為」が明確ではなく、権力の恣意(しい)的運用も可能となる。「住民を抑圧する、こんな悪法ができるなんて。治安維持法以上だ。戦前と同じじゃないか」

 沖縄戦を原点に、「(沖縄県民は)平和を求める強い心があり、幸せな未来のためにと、多くの運動がいまも引き続き行われている」と強調する。法案では各種の基地反対抗議行動も対象に含まれるのではないかという指摘もある。県民の思いも踏みにじる今回の法案に対して、「時代逆行だ。戦争をするための準備なのか。日本はどこに向かっているのか」。疑念は消えない。 

(新垣若菜)

 

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